MAツールを導入すると、見込み顧客の獲得や教育を自動化できます。潜在顧客のフォローに手が回っていない企業には、有効なツールといえるでしょう。
しかしMAツールの運用にはマーケティングの知識が必要で、初めて導入した企業は使いこなすのが難しい一面もあります。
「導入すれば本当に自動で売上が上がるの?」
「MAツールが必要になる事業規模の目安は?」顧客データが十分にある
この記事では、上記のような疑問に答えるべく、MAツールでできることや、効果的なMAツールの導入方法や選び方を紹介します。MAツール導入のタイミングも解説しますので、導入を検討する際の参考にしてください。
MAツールとは
マーケティングオートメーション(MA)ツールは、マーケティング活動を自動化し、顧客との関係を強化するためのソフトウェアです。MAツールを導入すると、たとえば以下の業務が自動化されます。
- 潜在顧客の整理・管理
- 自動メール配信
- ワークフロー管理
- レポーティング・分析
- ソーシャルメディア(SNS)管理
- A/Bテストで広告やサイトを最適化
あらかじめ設定したストーリーに沿って潜在顧客に自動でアプローチするため、商談アポの件数を増やしたり、成約率を上げたりといった結果が得られます。またリストへのアプローチが自動化されるので、業務縮小が可能です。
MAツール導入のメリット3つ
MAツールを導入するメリットのなかでも、売上に直結するポイントを3つ解説します。
1.失注商談の再見込み化
MAツールを使うと、成約につながらなかった商談の再活性化が図れます。
失注商談の顧客リストが手つかずで放置されていることもあるでしょう。MAツールでは、失注商談に関する情報やタスクを自動で担当者に通知し、TODO化することで失注商談を掘り起こして再アプローチを可能にします。
【顧客を再見込み化する流れ】
- リードタイムの期間を決めて失注とする
- 失注ルールに基づき停滞している商談を振り分ける
- 失注理由を営業担当が入力
- 失注理由を満たす条件やキャンペーンや新サービス時期にMAツールが自動で顧客をリストアップ、営業へアラート
上記のステップで消えかけた顧客が掘り起こされ、再度営業をかけやすくなります。
2.既存顧客のアップセル&クロスセル
MAツールの活用で、既存顧客に対するアップセルやクロスセルの機会を見逃さず、タイミングよくアプローチできます。
なぜならMAツールを導入していれば、既存顧客が再購入につながる行動をとったときに営業担当にアラートが行くためです。
たとえば、新商品に関するメルマガで「開封」「URLクリック」などの行動をすると営業担当者にアラートが行きます。営業担当者は既存顧客の興味関心や行動をリアルタイムで把握し、適切なタイミングでアプローチが可能です。
3.潜在顧客フォローの自動化
日々の営業活動に追われていると、商談にいたっていない顧客のフォローが手薄になりがちです。なぜなら購入が決まりそうな顧客や既存顧客のフォローが優先されるためです。
MAツールで潜在顧客へのフォローアップを自動化すれば、販売につながる営業活動と潜在顧客とのコミュニケーションが両立できます。
以下の自動化は、潜在顧客へのアプローチに有効です。
- ステップメール
- 営業担当へのアラート
ステップメールでは、潜在顧客に対して定期的に適切なコンテンツを提供し、関心を引き続けます。
アラート機能は顧客が特定のページを訪問したり、特定のリンクをクリックしたりした場合に、営業部門にアラートが行く機能です。
MAツールの導入は5ステップで
MAツールを導入する5ステップを解説します。MAツールを有効活用するには、導入前の準備が成功のカギです。
1.課題を明確にしてゴールを決める
セールスや販促に関する具体的な課題と得たい結果を明確にします。あいまいなまま進めると、必要な機能を見逃したり、不必要な機能に時間やリソースを費やしたりしてしまう可能性があります。
以下のように課題と目標を洗い出してみましょう。
課題 | ゴール |
---|---|
潜在顧客の取りこぼし | 見込み客フォローの自動化 |
顧客データがまとまっていない | 顧客データの一元管理 |
商談の成約率が下がっている | 継続フォロー、適切なコンテンツを自動選定・送付 |
課題を洗い出してゴールを設定すると、MAツールに必要な機能が定まります。
2.MAツールに必要な機能を決める
実装する機能を決める際には、目標達成に直結する機能を厳選することが大切です。ステップ1で定めたゴールに対して「問い合わせ件数〇%UP」「商談アポ件数が見込みの〇%」などの数値目標を定めることで、必要な機能を選定する際の指針となります。
MAツールに搭載できる機能の例は、以下のとおりです。
- 顧客情報データベース
- セールスフォースとの連携
- 名刺管理
- ステップメール(メールマガジン配信)
多くの機能を盛り込むとコストが上がるので、必要な機能を絞り込みましょう。
3.MAツールを選定し導入する
ステップ2で選定した機能を網羅するMAツールを複数ピックアップし、相見積もりを取ります。
MAツールは導入後も継続的に使い続けることが前提です。そのため相見積もりを取る際には、費用だけでなくツールの操作性や使いやすさ、そしてサポート体制も比較します。
同時に他社の運用実績を確認すると、MAツール導入が既存の業務にどのように生かせるかを具体的に予想しやすいでしょう。
4.運用フローを構築する
MAツール導入後、どのように運用するかのルールを設定します。コンテンツを届けるタイミングや内容を決めると、より多くのステップを自動化しやすくなります。運用フローを決める際には、営業部門が「ペルソナ設定」「カスタマージャーニー」を決めることが不可欠です。
ペルソナ設定では、顧客の人物像を詳細に設定します。カスタマージャーニーでは、設定したペルソナが購入にいたるまでの行動を、心理的要因も含めて設定します。
適切なコンテンツを適切なタイミングで提供するには、ペルソナ設定やカスタマージャーニーが明確であることが必要です。
5.MAツールを運用する
MAツール導入後は、運用するだけでなく定期的に振り返りと改善を行うことが大切です。
マーケティングを自動化するだけでは、実際の売上は上がりません。改善ポイントを見つけてコンテンツの精査やアプローチ方法の工夫をすることが、求める効果を得るカギです。MAツールは効果が数字で可視化できるため、改善ポイントも見つけやすいでしょう。
下記のフローを繰り返すと、MAツールの効果を上げやすくなります。
- 振り返りのスケジュール設定
- 目標達成の数値設定
- 成果の分析
- 改善の実施
MAツール導入に適した条件とは
MAツールを導入する際に、揃っていたほうが良い条件を3つ解説します。
1.顧客データが十分にある
MAツールを有効活用するには、ある程度の見込み顧客データが揃っている必要があります。CV率1%のメルマガの場合、MAツールで5,000件のリストに送付した場合のCV数は50件です。リストが多いほどMAツールの効果を発揮しやすいといえるでしょう。
どれくらいの顧客データがあればいいかは業態によって異なります。判断材料として「現状、顧客への対応が追いついていない」のであれば、導入のタイミングです。
MAツールによっては、500件ほどのリストで小さく運用できるものもあります。リストは展示会や無料セミナー、キャンペーン施策で増やせます。
2.新規引き合いにつながるサイトやコンテンツがある
リードを獲得できるコンテンツが充実していると、MAツールの効果を得やすいです。なぜなら、MAツールは既存顧客のフォローだけでなく、新規の潜在顧客とのコミュニケーションにも効果を発揮するためです。
自社サイトやオウンドメディアを通じて新規リードを獲得した時点で、顧客情報とフォローアップのストーリーが自動的にMAツールに反映されます。
具体的には、以下のようなメディアが機能していることが必要です
- 問い合わせフォームのあるWebサイト
- オウンドメディア
- ホワイトペーパー
- SNS
上記のメディアを通して得た新規リードに対しても、MAツールを利用することで迅速かつ効果的なフォローアップを実現できます。
3.運用するマンパワーがある
MAツールを効果的に活用するには、適切な人的リソースが必要です。特に、営業に関する知識や情報を持った人材が不可欠です。営業との連携が不足すると、適切なフォローアップが難しくなります。
コンテンツを作成するマーケティングと、顧客に直接アプローチする営業が連携するために、MAツール運用チームに営業の人員の配置が必要になる場合もあります。
MAツールを選ぶ際に確認すること
MAツールの効果を引き出すには、自社に適したMAツールを選ぶことが大切です。MAツールの選び方4選をご紹介します。
1.自社の業態に合う機能か確認
販売商品に合ったMAツールを選ぶことが必要です。自社の業態と合わないと、必要以上のコストがかかったり、必要な機能が不足したりしてMAツールのメリットを活かせません。MAツールに搭載されている機能は、おおまかに「BtoB向け」と「BtoC向け」に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
BtoB向けは、見込み客の管理と教育を重視し、取り扱われる見込みリード数は約500から10,000件程度と比較的少ない設定です。リードを狭く深く育てることにフォーカスしています。
一方BtoC向けは、リードの人数が多く接点が多様化するため、データ容量が大きい傾向があります。バラツキのある情報を一元管理できる機能も必要です。
2.既存システムとの連携を確認
MAツールを導入する際には、既存のシステムや外部システムとの連携ができるかどうかの確認が必要です。なぜならMAツールは活用範囲が広く、ほかのシステムやツールとの情報共有が必要なケースがあるためです。
SFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理システム)と連携できるMAツール、もしくは一体型のMAツールを、自社のシステム運用状況に応じて選定してください。
拡張性が高いと既存のシステムと連携できますが、MAツールを含めた複数のシステムを運用するリソースが必要になります。
3.保存データ量と期限を確認
MAツールを選ぶ際には、保存データ量と期限を確認し、自社のニーズに合った容量と期限を把握することが重要です。データ容量や保存期限は、MAツールの運用コストに直結します。必要以上の容量や長期間の保存は余計な負担です。
データ容量は扱うリード数や顧客の行動履歴の多様性に沿って決めます。また保存期限は、顧客のリードタイムや購入プロセスによって異なります。
4.サポートが充実しているかを確認
運用体制や担当者のスキルに合ったサポート体制があるかを確認することも必要です。
MAツールは専門的な知識や経験を要するため、適切な運用支援がないと、効果的なマーケティング活動が難しくなります。
技術サポートは、エラーやトラブルといったシステムの使い方に対するサポートです。サポート窓口の受付時間や、トラブルの際に担当者が訪問してくれるかを確認しましょう。
運用サポートは、マーケティングの経験が乏しい会社や担当者がデジタルマーケティングを行う際のサポートです。別途費用でコンサルサポートをするケースもあります。
まとめ
MAツールは、見込み顧客の獲得から育成、商談への導線を自動化し、売上アップに貢献します。リードタイムを有効活用できるため、商談の成約率が上がる効果も期待できるでしょう。
MAツールを導入する5ステップは以下のとおりです。
- 課題を明確にしてゴールを決める
- MAツールに必要な機能を決める
- MAツールをの選定し・導入する
- 運用フローを構築する
- MAツールをの導入・運用する
デジタルマーケティングに慣れていない企業でもシンプルに導入できるMAツールもあります。
顧客に合わせたマーケティングで潜在顧客と良好な関係を築くためにも、ぜひ導入を検討してみてください。