企業が集客や認知を拡大したいというときに、マーケティングは欠かせません。しかし「本当に成功できるのかな…」とマーケティング施策へ不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
マーケティングは実行するまで成果を判断できませんが、過去の事例から「失敗要因」「見直すべきこと」が分析できます。
そこで本記事では、マーケティングの失敗事例10個を厳選し、施策を取り組む際に注意すべき要点をまとめました。
マーケティングでよくある失敗要因と解決策
まずは企業のマーケティングでよくある失敗要因を5つ紹介していきます。解決策も合わせて紹介していますので、現状マーケティングがうまくいっていない場合は、本項目に当てはめながら考えていきましょう。
- 何も戦略を考えていない
- トレンドに左右されている
- 外注のみに頼っている
- 短期的にしか考えていない
- 相談する相手を間違っている
1.何も戦略を考えていない
マーケティングで失敗する最も多い原因は、戦略を考えずに実施しているケースです。
集客を行ううえでマーケティングは欠かせない要素。しかし戦略のないマーケティングは、「手ぶらで戦場に行く」ようなものです。
例えばホームページやLPを用意せずにWeb広告を実施しても、広告をクリックしてくれた人に対して何も伝えることができません。またホームページがあっても情報が古いままであったり、お問い合わせ先が不明だったりすれば、せっかく訪れたユーザーをがっかりさせてしまうでしょう。
マーケティングと一口にいっても、認知拡大・リピート客の獲得など複数の施策が存在するため、企業の状況に合わせて最適な戦略を導くことが重要です。
2.トレンドに左右されている
従来はチラシのポスティングやTVCMなど、マーケティングに費用をかけることが一般的でした。しかし近年はインターネットが普及し、SNSやホームページなど無料で始められるマーケティング手法が増えています。
そのため「TikTokが流行っている」という理由だけで取り組むケースも増加していますが、ただトレンドにのるだけでは成功できません。TikTokを例に、その理由をみてみましょう。
- 自社商品はTikTokでの投稿に適しているのか
- TikTokを利用しているユーザーと自社ターゲットは一致するのか
- TikTokの運用ノウハウはあるのか、また人材を確保できるのか
このように、媒体の特徴と市場における需要やターゲティングが合致することで、はじめてマーケティング効果を得られます。したがって施策を選択する際も、しっかりとした根拠を持つことが大切です。
3.マーケティングを「売る手段」だと思っている
マーケティングを実施するうえで「広告代理店やマーケティング会社に外注すれば成功できる」と考えているケースは多いですが、かならずしもうまくいくとは限りません。なぜなら商品の価値・アピールポイントがなければ、優れたマーケティング施策を行っても成功できないからです。
例えば「iPhoneとまったく同じ性能・価格のスマートフォン」を開発したとして、Apple社よりも優れたマーケティングを実施すれば、爆発的に売れるでしょうか。きっと多くの方は、わざわざ新しいスマートフォンを購入しようとは考えないでしょう。
しかし価格面・機能性で何かしらの強みがあれば、iPhoneよりも選ばれる可能性が生まれます。マーケティングは「売る手段」ではありません。マーケティングは「売れる仕組み作り」のことであり、商品開発やブランディングもすべてマーケティングなのです。したがって売る手段を考えるよりも「モノ本来の価値を高めること」が最も重要であると認識しておきましょう。
4.短期的にしか考えていない
「ホームページを制作して1ヶ月経つのに問い合わせがこない」「2週間SNSを毎日投稿したけど変化がない」など、1ヶ月〜3ヶ月程度の短期間で成果を判断している場合は注意が必要です。
なぜならマーケティングで成功するためには、効果検証→改善の繰り返しが必須。そのため継続的に施策を検証することが求められます。
またホームページ運用やSNS運用などコンテンツ蓄積型のマーケティングでは、費用をかけずに始められる点がメリットです。対して効果を出すまでに時間がかかる点はデメリットのため、施策の特徴を踏まえたうえで、計画的に取り組むことが重要になります。
5.相談する相手を間違っている
マーケティング会社を依頼する際は、自社の規模に合った会社を見極めることが重要です。
例えば大手企業のマーケティング事例や成功体験談のマネをしてもうまくいきません。
大手企業では予算・時間が多くあり、さまざまな施策へ挑戦できるでしょう。しかし中小企業では、限られた予算のなかで成果につながる施策を実施できなければ、継続的に施策を行えません。
またマーケティング会社のなかでも、ホームページに強い会社・SNSに強い会社・Web広告に特化した広告代理店など、専門とするジャンルはさまざま。依頼する会社によって、得意な業種も異なります。
すべてに対応していると謳っているマーケティング会社もありますが、逆にいえば「強み」がなく、すべてにおいて経験が浅いともいえます。したがって自社の業界や目的とマッチした得意分野の会社へ相談・依頼することがおすすめです。そのため依頼前にマーケティング会社の実績については確認するようにしましょう。
企業マーケティングの失敗事例5選【ブランディング】
ここでは企業マーケティングのブランディングにおいて、5つの失敗事例を紹介していきます。
1.SKIP
ユニクロ・GUを運営しているファーストリテイリングは、2002年に野菜の生産や販売を行う「SKIP」という事業をはじめました。アパレル事業で培った経験から「食品の流通でも無駄を省ける」と考えていましたが、結果的に1年半で約30億円の赤字。
当時の社内反省会では、失敗した要因として以下の3つが挙げられました。
- 食品業界の経験値が少なかったこと
- 顧客のニーズ把握が甘かったこと
- 関係者(農家など)への影響を考えていなかった
たしかにアパレルも食品も、物流という枠では通ずるものがあります。新規事業において一つのノウハウを横展開することが重要ですが、マーケティングでは市場や顧客視点をもつことが大切であると学べる事例です。
2.トロピカーナ
フルーツベースの飲料を製造するトロピカーナでは、2009年にリブランディングとして新パッケージに変更する戦略をとりました。
変更後はオシャレさを意識したデザインに変化し、「文字が横書き→縦書き」「果実の絵→グラスに注がれた絵」など複数の点が変更。
5ヶ月間におよぶリブランディング施策でしたが、結果的に売上が20%ダウンし、30日後には元のパッケージに戻ることになりました。
失敗要因では「情報が見にくい」「商品の強みが伝わらない」ことが挙げられ、なかでも果実の絵をなくしてしまった点が原因と考えられます。時代にあわせたデザインの変更も重要ですが、これまで培ったブランディングを変えればファンが離れてしまう可能性もあるため、新規顧客だけでなくリピーターのことも考えることが大切であると学べます。
3.アツギ
タイツを販売している大手メーカー会社のアツギは、2020年タイツの日である「11月3日」にTwitterで「タイツを履く女性のイラスト」を投稿しました。
イラストレーターとのコラボ企画となり、「#ラブタイツ」というハッシュタグを用いたキャンペーンでしたが、「イラスト画像が性的である」などの理由で批判が殺到。
タイツは女性向けの商品であるにも関わらず、女性が求めるようなイラストではありませんでした。そのため男性に向けた性的詐取だと捉えられ、SNS上で炎上してしまった事例です。とくにSNSでは賛否両論が起こりやすいため、購買層へ向けた適切な表現・発言であるかを慎重に判断することが重要です。
4.鳥貴族
焼き鳥系をメインに全国展開している居酒屋「鳥貴族」では、2017年に全品280円から298円均一へ価格を変更しました。同時期に他社居酒屋でも価格の値上げ(3%前後)は行われていましたが、鳥貴族では約6%の値上がりとなり、2018年は純利益が激減する事態に。
また値上げに加えて「タッチパネル」を導入したことで、顧客がいつでも会計額を確認でき、以前と比べ注文数の減少につながったことが失敗要因と考えられます。
飲食店は価格の変化によって、顧客心理に影響を与えやすい業種。そのため「一部の商品のみ」「3%以内」など、徐々に価格を調整することが重要です。
5.いきなりステーキ
立ち食いでステーキ料理を楽しめる「いきなりステーキ」は、2019年にニューヨークで展開していた11店舗のうち、7店舗を閉鎖することになりました。
失敗要因では以下が考えられます。
- アメリカ人に立ち食いが合わなかった
- アメリカ人のステーキ事情を把握できていなかった
アメリカは日本と比較するとステーキを日常的に食べており身近にあるため、外食では高価なステーキが求められる傾向にあります。そのため手軽さ・安さのステーキ料理は住宅で食べることが多く、いきなりステーキは浸透しにくかったと考えられます。
企業マーケティングの失敗事例5選【差別化戦略】
ここでは企業マーケティングの差別化戦略において、5つの失敗事例を紹介していきます。
1.USJ
経営不振からV字回復したことで有名なUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)ですが、オープン当初は「ハリウッド」をテーマにしたテーマパークで、思うように集客できずにいました。理由としてハリウッド映画を表現することに注力しており、日本人があまり馴染みのない世界観であったことが挙げられます。
たしかにハリウッド映画を好きな人もいらっしゃいますが、万人受けするテーマとは言えません。そこでUSJでは「エンターテイメント」を重視したコンセプトに変更し、現在のような日本のアニメやゲームを積極的に取り入れることにしました。
このように海外で有名なものでも、日本人のニーズに適するかは異なるため、ターゲットを見極めたうえで差別化を図ることが重要です。
2.大塚家具
2022年にヤマダデンキと合併した大塚家具は、差別化に失敗したことで業績が悪化してしまった事例です。
従来は「会員制」によって高級家具店の立ち位置にいましたが、近年では価格を多少抑えることで、以前よりも手の届きやすい相場へとコンセプトチェンジ。しかし価格を下げたことで従来の顧客は離れてしまい、結果的に業績を著しく下げる事態に。
本来、大塚家具を求める顧客は「高級な家具が欲しい」というニーズを持っていたと考えられます。しかし価格を変更したことで顧客のニーズからズレてしまい、自社の強みである差別化が失われてしまったことが失敗要因といえるでしょう。
3.ZOZOSUIT
日本国内の大手アパレル通販であるZOZOTOWNでは、ZOZOSUITを導入することで「オーダーメイドスーツ」を手軽に作れるビジネスモデルを展開しました。ZOZOSUITは着るだけで自分に適したサイズを測れる商品でしたが、以下のような点が問題となり、約1年でサービス停止に。
- 計測する際に30回転以上する必要がある
- 計測アプリに不備がある
- オーダーメイドスーツの納品に時間がかかる
ビジネスモデル自体に欠点があったわけではなく、サービスの品質に問題があったと考えられます。サービス提供を早めることは大切ですが、細かい戦略や実行計画の重要性を再認識できる事例です。
4.コンビニドーナツ
コンビニでは日々さまざまな新商品がリリースされており、なかでもコーヒーは差別化戦略で成功した事例といえます。しかしコーヒーに次いで提供された「ドーナツ」は、顧客のニーズとズレが生じたことで、最終的にどのコンビニでも取り扱いを中止する事態に。
具体的な失敗要因では、まずドーナツを求める顧客層の少なさが挙げられます。コーヒーと比べると市場規模が狭く、ドーナツへ手軽さを求める人は少ないといえるでしょう。
また大手ドーナツ店と比べて扱えるドーナツの種類が少なく、顧客を獲得できなかったことが失敗した原因と考えられます。新商品を扱う場合は、市場分析によって顧客獲得の見込みをしっかりと立てることが重要です。
5.遠藤商事Holdings
「NAPOLI」「Napoli’s PIZZA&CAFFE」などのピザチェーン店を運営していた遠藤商事Holdingsは、「本格的なピザをワンコインで提供する」をモットーに、国内外で80店舗以上を展開していました。
「90秒で調理できる仕組み」など画期的なオペレーションによって急速に拡大していましたが、人材育成が間に合わず、最終的には資金繰り問題によって破産してしまった事例です。
店舗拡大に伴って利益が伸びていれば問題ありませんが、当事例の場合は利益が低迷していたにもかかわらず、店舗拡大を行ったことが問題と考えられます。ときには店舗撤退を行うことも重要なため、現状の状況と照らし合わせながら、確認するようにしましょう。
マーケティング失敗事例から考える成功の秘訣3つ
ここではマーケティングの失敗事例をもとに、企業が押さえておくべき要素を3つ紹介していきます。
1.市場分析を丁寧に行う
マーケティングで失敗する要因のなかでも、市場や顧客分析をないがしろにしているケースは多いです。
とくに新規参入する市場の場合、いままでの経験がかならず生きるとは限りません。市場特有の対策が必要な場合もあるため、まずは自社が提供する商品・サービスに需要があるのか、しっかりとリサーチしておくことが重要です。
また基本的には、顧客に対して「不満・問題を解決する」「生活に喜び・利便性を与える」のどちらが価値となることが多いといえるでしょう。そのため消費者の不平不満についてリサーチすると、市場についての理解を深められます。
2.テストマーケティングから始める
どのマーケティング施策においても、はじめはテストマーケティングから実施するようにしましょう。
どんなに入念な分析・計画を行ったとしても、すべてが成功するとは限りません。とくに予算に限界がある中小企業では、「どこに予算を注力するのか」によって、将来的な売上に大きな差が生まれます。
テストマーケティングであれば状況に応じて撤退を行いやすいため、失敗しても最小限の損失で済みます。また初動が良くても継続性に問題がある場合も存在するため、複数のテストマーケティングによって最適な戦略を選ぶことが重要です。
3.コストオーバーを避ける
事業を行ううえでは、徹底したコスト管理が重要です。
仮に需要があるサービスを展開している場合でも、コストオーバーになれば元も子もありません。とくにマーケティングを行う際は、宣伝広告費として最初に予算を投資する必要があります。
そのため売上見込みの目処が立たないと運営が回らなくなり、最終的には倒産せざるを得ない状況も考えられます。したがって初期費用はもちろんのこと、事業拡大を行ううえでの資金調達など、ランニングコスト面もしっかりと考えてから実行するようにしましょう。
まとめ
本記事では、マーケティングの失敗事例10個を厳選し、施策を取り組む際に注意すべき要点を解説してきました。
マーケティングでは実行前の市場分析やテストマーケティングが欠かせません。