「コロナウイルスの影響により、受注が減ってしまった」
「オンライン化が進み、従来の集客方法ではうまくいかなくなった」
といった状況下において、自社の将来性を考える建設会社も増えたのではないでしょうか?
そこで、この記事では建設業の2024年最新動向を徹底調査し、わかりやすくまとめてみました。
数多くの建設業界のマーケティングを手がけた弊社が、建設業界の将来性・現状を分析。最新データを厳選しましたので、経営戦略を練る際にぜひご活用ください。
建設業界の現状
「リニア中央新幹線の開通工事」「老朽化した下水管、首都高速の再整備」なども進められており、今後も建設業の需要はより高まる見込みです。しかし、その一方でさまざまな問題を抱えているのをご存じでしょうか?
そこで、建設業界がどのような現状なのかをピックアップしましたので、詳しく解説していきます。
- 職人の高齢化
- 人材不足
- 労働環境の見直しが必要
1.職人の高齢化
建設業界では職人の高齢化が進んでおり、歯止めが効かない状況が続いています。
国土交通省が発行した資料によると「建設業就業者は55歳以上が約34%」「29歳以下が約11%」となっています。建設業界では今後も若年層の減少が見込まれているため、“いかに次世代へ技術を受け継いでいくか”は大きな課題だといえるでしょう。
2.人材不足
建設業界では人材不足が問題視されており、年々就業者数が減少し続けています。
上記資料によると建設業で働く人は「平成9年:685万人→平成28年:492万人」と約200万人も減っており、ピーク時と比較すると-約28.18%という結果になっています。
また、人材不足に陥っている原因として、次のようなものがあります。
- 仕事のハードさ
- 作業に伴うリスク
建設の仕事に対して「3K(きつい・危険・汚い)」のイメージを持つ人は多いでしょう。
実際に現場での力作業は非常にハードなうえ、高所での作業には必ず危険がともないます。加えて、土工の作業では泥やコンクリートが付着し、汚れてしまう場面もあるでしょう。このような影響により、“離職率が高い・若年層を採用できない”状況が続いていると考えられます。
3.労働環境の見直しが必要
建設業界では働き方改革が進んでいない会社も多く、長時間労働が蔓延しています。
工事を受注しても現場で活躍できる人材が少ないため、必然的に労働が長時間化してしまうのです。新たに人材を確保したくても、「長時間拘束があたり前の環境で仕事がしたい」と考える人は多くないでしょう。このような点も、人材不足から抜け出せない原因だといえます。
さらに「社会保険に加入できない」「生産性が向上しない」などの問題で、労働環境に不満を持つ社員も多いです。
そのため、今後の需要の高まりに対応するためにも、若年層の獲得に加えて「中途採用の促進」「離職防止・定着促進」「女性・外国人・高齢者の雇用促進」などに取り組むと良いでしょう。
建設業界におけるコロナの影響
新型コロナウイルスが流行したことで、建設業でも大きな影響が出ています。JAGフィールド株式会社が、建設業界関係者を対象に行った調査によると「工事の延期・中止」「会議・打ち合わせの中止や延期」「資材の納期遅延」などの影響を受けた会社が多いことがわかります。
出典:【新型コロナウイルスによって建設業界はどう変化した?】コロナ禍での変化やこれからのIT化に関する考えが明らかに!/JAGフィールド株式会社(PR TIMES)
また、東京商工リサーチの調査によると、受注減少が原因で倒産した建設業は2020年後半から微増しています。内訳は負債額別で見ると、5億円未満の企業が約9割。一方従業員別で見ると、10人未満の企業が約8割です。
このことから、小規模事業者の倒産が非常に多いことがわかります。資材価格の高騰・受注競合・人手不足・支援効果の薄れなどさまざまな要因も絡み、より厳しさが増している状況です。
建設業界の2022年までの動向
建設業界は“東京オリンピックまでは好景気”といわれていましたが、2021年に閉幕しました。そのため、一部では「五輪後は業績が大きく落ち込むのでは?」と動向を不安視する人もいますが、実際はどうなのでしょうか。
結論からいうと、“建設業はオリンピック後も堅調に推移していく”という見方が多いです。なぜなら、今後も首都圏を中心とした再開発・大阪万博や統合型リゾート(IR)に伴う近畿圏の再開発などの計画も進んでいるため。したがって、今後も安定した需要を獲得する見込みとなっています。
この項目では建設業界の2022年までの動向を詳しくまとめましたので、ぜひご覧ください。
- 働き方改革の推進
- 省人化を図っている
- リフォーム工事の増加
- 脱炭素化の動きが加速
1.働き方改革の推進
さきほども説明した通り、建設業界は長時間労働が常態化しています。
- 建設業の月間労働時間:168.2時間(全産業の平均139.1時間よりも、毎月約30時間も多い)
- 月間出勤日数:20.5日(全産業平均は18日のため、平均よりも毎月2日多く出勤。週休2日も十分に確保されていない)
厚生労働省の資料(第2表:月間実労働時間及び出勤日数)によると、建設業界の労働環境はこのように非常にハードになっています。そのため”離職率が高く、求職者は少ない”という状況から抜け出せていません。
しかし、2024年4月から建設業界にも時間外労働の上限規制が設けられました。それは、国土交通省が建設業界の課題を解決するために定めた「建設業働き方改革加速化プログラム」です。
この制度の具体的な取り組みを、下記にまとめています。
プログラムの項目 | 具体的な取り組み |
---|---|
長時間労働の是正 | ・週休2日制を後押しする …公共工事における週休2日工事の実施団体・件数を大幅に拡大するとともに民間工事でもモデル工事を試行する …公共工事の週休2日工事において労務費等の補正を導入するとともに、共通仮設費、現場管理費の補正率を見直す …週休2日を達成した企業や、働き方改革に積極的に取り組む企業を積極的に評価する など ・適正な工期設定を推進する …「適正な工期設定等のためのガイドライン」について、各発注工事の実情を踏まえて改定し、受発注者双方の協力による取り組みを推進する など |
給与・社会保険 | ・技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現する …発注関係団体・建設業団体に対し労務単価の活用や適切な賃金水準の確保を要請する …建設キャリアアップシステムの稼働と、概ね5年ですべての建設技能者(約330万人)の加入を推進 …技能・経験にふさわしい処遇(給与)が実現するよう、建設技能者の能力評価制度を策定 など ・社会保険への加入をミニマムスタンダードにする …全ての発注者に対して、工事施工について、下請の建設企業を含め、社会保険加入業者に限定するよう要請する …社会保険に未加入の建設企業は、建設業の許可・更新を認めない仕組みを構築する など |
生産性向上 | ・生産性向上に取り組む建設企業を後押しする …中小の建設企業による積極的なICT活用を促すため、公共工事の積算基準等を改善する など ・仕事を効率化する …建設業許可等の手続き負担を軽減するため、申請手続きを電子化する。施工品質向上のためIoTや新技術の導入する など ・限られた人材・資機材の効率的な活用を促進する …技術者配置要件の合理化を検討する、施工時期の平準化を進める ・重層下請構造改善のため、下請次数削減方策を検討する |
出典:【2024年】建設業の働き方改革で変わることは? 取り組みを進める上での注意点も解説 – 業務改善ガイド|タヨロウ|バックオフィスを支援する「頼れる労務ONLINE」 (amano.co.jp)
したがって、今後は「何時間でも残業してもOK」という状況は困難になり、働きやすい環境に変わっていくでしょう。「技術継承の問題」「後継者不足」などの問題解決も期待されます。
2.省人化を図っている
職人の高齢化が進み、今後も建設業界の人材需要はより高まる見込みです。そのような課題を解決するため、「ロボット」「ICT技術」「AI導入」などを活用する会社が増えています。
主な事例としては、次のようなものが挙げられます。
人手不足を解決するためには、雇用以外の視点で考えることが非常に重要です。自社の工期短縮を実現するためにも新工法を積極的に導入し、省人化を図っていきましょう。
3.リフォーム工事の増加
コロナウイルスの影響で「在宅時間が増えた」「ワークスタイルが変わった」という方も多いでしょう。そのような影響から「住環境を見直したい」「もった快適な住まいにしたい」と考えるお客さまが増え、リフォーム市場に新たな需要が生まれています。
出典:コロナ禍でもリフォームは堅調。新生活の様式への対応も | スーモジャーナル – 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト (suumo.jp)
上記のように、コロナ禍により大きくニーズが変化しています。「テレワーク空間用に間仕切りをつくる」「室温を変えずに換気できる空調設備を追加する」といったような、コロナ禍を意識したリフォームが人気です。
また、少子高齢化の加速により「新築を建てなくても良い」「中古住宅を購入して、自分好みに変えたい」と検討する人増えています。今後も中古市場がより活発化すれば、リフォームの需要はさらに高まるでしょう。
4.脱炭素化の動きが加速
- CO2を吸収するコンクリートの開発
- 省エネ住宅の普及
上記のような流れが生まれており、今後は“脱炭素化”を重視した新築住宅・省エネ化の建設需要は高まる見込みです。
特に注目されているのが、省エネ住宅でしょう。省エネ住宅とは冷暖房のエネルギー消費を抑えられる住宅のことで、夏の暑さをさえぎる日射遮蔽・冬に熱を逃がさない断熱性が特徴。空気を逃がさない気密により、冷暖房効率を上げて電力消費を減らせる点がメリットです。
国土交通省は住宅の省エネ対策に約1,300億円の予算を要求しており、今後は省エネに向けた改修への支援・住宅生産者や技能者・設計者への支援などが実施される予定です。今後も“建設業界における脱炭素化の動き”は、ますます加速するでしょう。
建設業界の売上高・シェアランキング
続いて、2021年度の建設業界における売上高・シェアランキングをまとめました。
1位は鹿島建設、次いで大林組や大成建設などの大手企業が主に上位を占めていることがわかります。
出典:建設業界の動向や現状、ランキングなど 2021年版(業界動向SEACH.COM)
建設業界の2024年~の将来性
「建設業界は、5年後・10年後どうなっていくのだろう…」と不安に思われる方も少なくないでしょう。
最後に建設業界の将来性を具体的に解説しますので、こちらもぜひご覧ください。
- 需要はなくならない
- 採用の間口が広がる
- 新事業への展開も
- 海外へのインフラ輸出に期待
1.需要はなくならない
少子高齢化が進み、国内人口は減っていますが“住宅の必要性”に変化はありません。
また、今後も教育施設・商業施設などの建設がコンスタントに発生する見込みです。さらに災害が起きた場合は復興の建設需要は必須。そのため、今後も“多くの人から必要とされる業種”であるといえます。
2.採用の間口が広がる
建設業界では、慢性的な人手不足がなかなか解消しません。
“3K(きつい・汚い・危険)”のイメージを刷新すべく、「人材育成に注力する」「若手を引き寄せるためのキャンペーンを実施する」など採用活動を見直している企業も多いです。今後も建設業界における採用の間口は広がり続けていくでしょう。
3.新事業への展開も
建設業のビジネスモデルは転換期を迎えており、続々と新事業への展開を決意する会社が増えています。主な進出事例として、このようなものがあります。
- ガーデン・外構をメインに扱うリフォームショップ
- 福祉住環境に考慮したリフォーム事業
- マンションのリニューアル事業
新事業へ展開することで、“独自性”をしっかりアピールできます。そうなると、他社との差別化につながり、自社に興味を持つお客さまが増える可能性も高いです。
競合が激しい建設業がこれまで以上に発展していくために、新事業の展開は欠かせないものになるでしょう。
4.海外へのインフラ輸出に期待
日本政府は、平成25年3月に「インフラシステム輸出戦略」を掲げました。これにより、政府・民間企業が力を合わせ“日本の充実したインフラ整備技術・ノウハウを諸外国に輸出すること・相手国と日本の経済や企業の発展を両立させること”を目指しています。
将来的には、新興国や発展途上国など、今後“経済が発展する・人口増加・インフラ設備の充実が必要な国家”に対し、我が国のインフラシステムが提供される確率が高いです。
したがって、日本のインフラシステムを海外に輸出する流れにも期待できるでしょう。
まとめ
この記事では、建設業の2023年最新動向を、建設業のマーケティングが豊富なプロが徹底調査しました。
建設業では“高齢化・人材不足・労働環境の見直し”が問題視されており、解決を図る必要があります。また、今後は「海外へのインフラ輸出が増える」「新事業へ展開する企業が増える」可能性もあり、より需要が高まる見込みです。
建設業界の状況は常に変化しているため、最新動向をしっかり把握して、臨機応変に対応していきましょう。