多くの施工を行っているのに、実際に残る利益が少ない…と悩んでいる外壁塗装業の方も多いようです。
どのような業種にもかならず「原価」そして「利益」というものが存在します。
売上だけ上げても、原価やマージンが多く引かれれば「利益」はほとんど残らないのです。どんなに頑張って多くの仕事をこなしたところで、利益率が低いと安定した経営から遠ざかってしまいます。逆に、利益率が高ければ少ない仕事でも、5年10年と市場で生き残れる企業になれます。
本記事では利益を増やせない外壁塗装業の問題点を考察し、利益率を高め売上をアップする方法をまとめました。今よりも成長できる企業になるための秘訣をお教えます。
外壁塗装業の利益率とは?
利益率とは「売上のなかで利益が占める割合」を指し、以下の計算式で求められる指標です。
- 利益率=利益 ÷ 売上高 ×100%
ただし「利益率」は5種類あり、どの内容を「利益」として考えるかによって、実際に数字は大きく変化します。
- 売上総利益(粗利)
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
一般的には売上額から原価を差し引いた「売上総利益(粗利)」を用いることが多く、本記事でも「売上総利益=利益率」として解説していきます。
この項目では外壁塗装業の平均利益率、そして利益率を重視すべき理由について確認していきましょう。
平均利益率は30%前後
外壁塗装業の利益率は25%〜35%が多く、平均利益率は30%前後になります。
建設業全体では20%前後が平均となるため、外壁塗装業は比較的高い数字です。
とはいっても不動産業や情報通信業は50%前後となり、業種別で考えると建設業の利益率は低いといえるでしょう。
このように建設業の利益率が低い理由は、かかる原価や経費の種類が多いためです。
外壁塗装業にかかる原価や経費例
- 人件費:30%前後
- 材料費:20%前後
- 足場:10%前後
- 営業スタッフ:10%前後
なかでも塗装の現場で作業を行う仕事上、人件費が最も大きな割合を占めます。
技術力が重要視される外壁塗装では一人あたり1日1万5,000円〜が相場となり、効率良く現場を回せるかによっても利益率は大きく変化します。
利益率を重視すべき理由
「利益率」という言葉を聞いたことがあっても、紹介や下請けの受注がメインであれば、なぜ重要なのかを知らない人もいるでしょう。
利益率を重要視すべき理由は、数字を把握・管理することによって、適切な経営状況を維持できるからです。
たとえば売上が多くても、原価や仲介料などのマージンが高く、利益率が低い状態であれば、赤字の可能性も考えられます。利益率を把握していない場合、目先の売上額だけを追ってしまい、赤字に気づかないこともあるでしょう。
また建設業では報酬が後払いで支払われることが多く、キャッシュフローが回らなくなる「黒字倒産」になりやすい業種です。
そのため日々の資金管理を行うためにも、利益率から「引き受けるべき仕事であるかの判断」や「適切な価格設定」を行うことが重要になります。
利益率が低い外壁塗装業者の特徴
企業によって利益率は前後するものの、利益率が低い外壁塗装業者は以下の特徴が当てはまります。
外壁塗装をはじめ建設業では下請けや紹介で仕事を取る傾向があることが課題でしょう。
- 下請け業者である
- 過度な値下げを行っている
利益率が低い原因を改善できれば数値は高められるため、この項目で具体的な原因を考えていきましょう。
下請け業者である
外壁塗装業者が利益率の低さで悩んでいる最大の原因は、下請けで仕事を引き受けていることです。
下請け業者は元請けの言い値でしか受注できず、基本的にコストを削減するしか利益率を高める方法がありません。
コスト削減といっても人件費や材料費も減らすには限度があるため、結果的に「利益率が低い案件を多くこなす」といった状態になりやすく、多くの業者が悪循環に陥っているのが現状です。
外壁塗装業ではこのような下請け構造が一般的となっており、下請け会社のまま改善することは非常に困難といえるでしょう。
そのため利益率が高く安定した経営基盤を作るためには早期の下請け脱却が求められ、今後市場で生き残るためにも欠かせない取り組みになります。
過度な値下げを行っている
なんとか受注を取ろうとして施工価格の値下げを行っている場合も、利益率が上がらず低単価案件ばかりを引き受ける状態になります。
実際、元請けとして受注できている場合でも、価格競争によって利益率を高められないケースは多いといえるでしょう。また一度値下げを行えば、価格帯を戻すことや以前より上げることが難しくなり、簡単には抜け出せない状況に陥ってしまいます。
仮に大手企業のように安定した経営基盤があれば薄利多売も可能になりますが、中小企業の価格帯勝負は正直勝ち目がありません。
そのため中小企業の外壁塗装業者はサービスの質や他社にはない魅力で競うことが重要となり、「いかに付加価値を提供できるか」が利益率を上げるポイントです。
外壁塗装業の利益率を改善する方法5つ
利益率を改善する方法は、「売上向上」と「コスト削減」の2パターンに分類されます。
方法ごとに特長をまとめましたので、参考にしながら実際の経営・現場に落とし込んでいきましょう。
売上向上
最初に考えるべき改善方法は、利益率を高めて売上を伸ばすことです。ただ売上額を増やすだけでは利益率が変わらないため、以下の2点から粗利を増やすことに注力しましょう。
- 販売単価を上げる
- 自社で職人を抱える
1.販売単価を上げる
利益率を改善する最も簡単な方法は、販売単価を上げることです。
必要な原価・経費が変わらなければ、販売単価を上げることで粗利額が増え、結果的に利益率が向上します。
同じ受注件数でも利益率のみを高められるため、非常に効率が良い方法といえるでしょう。
ただし販売単価を上げた際は、受注が減ってしまうおそれがある点に注意が必要です。
価格改定を行うには金額を上げるだけではなくサービスそのものの価値を高めることが重要となり、「自社が得意な領域やサービスの強化」によって、アピールポイントを明確化する必要があります。
具体的には、
- 地震の振動に強い特殊塗料
- カビ・虫を寄せ付けない塗料
など、機能性の高い塗料を用いることで、通常よりも高単価のサービスを実現できます。
このように需要のある工事・サービスはたくさんあるため、日頃から顧客ニーズを考えながら、提供できる付加価値を高めていきましょう。
2.自社で職人を抱える
外壁塗装業では人件費が大きなコストになるため、自社で職人を抱えることで、外注をなくし利益率を高められます。
売上を増やすには多くの案件獲得が必須となり、案件をしっかりと回せるだけの社内体制が必須です。
そのため自社に職人がいれば安定した体制を整えられ、急な案件受注などにも対応できるでしょう。
採用・育成には時間がかかりますが、長期的な目線で考えると経営の安定化につながるため、人材への投資は積極的に行っていくことをおすすめします。
コスト削減
つづいて考えられる改善方法は、塗装の原価や経費などコストを削減することで利益率を高める方法です。
コストによって短期的・長期的に削減できるかは異なるため、自社状況を確認しながらすすめていきましょう。
ここでは取り組みやすい方法として、以下の3つから解説していきます。
- 工程管理を徹底する
- 材料費の価格交渉を行う
- 広告宣伝費を見直す
3.工程管理を徹底する
コスト削減で最初に考えるべきポイントは、工程管理を見直し、余分や人工を減らすことです。
多くの方がコスト削減と聞くと、真っ先に人件費を削減しようとします。
たしかに人件費はコストの大部分を占めますが、ただ日当を下げるだけでは、職人さんが自社から離れていくだけです。結果的に施工の質が悪くなり、悪循環に陥ってしまいます。
そのため「適切な人員や時間で現場を回せているのか」を把握し、現場の効率性を改善することで、利益率の向上につながります。
具体的には、以下のポイントを意識しましょう。
- 各現場の人工を把握する
- 作業時間を管理する
- 現場スタッフの行動を把握する
- 悪天候時にも作業できる現場・場所について把握する
また施工の工程管理はマニュアル化し、社内で共有することが重要です。
各現場で無駄な人工を削減できれば利益率は大きく改善されるため、かならず意識するようにしましょう。
4.材料費の価格交渉を行う
つづいてのコスト削減方法は、材料費の価格交渉を行うことです。
塗料などの材料費は人件費の次に大きなコストになるため、価格交渉を行い仕入れ値金額を下げられれば、原価削減によって利益率の向上につながります。
ただし価格交渉を行うべき材料費は「差別化塗料」です。
その名の通り「他社との差別化」を目的に作られた塗料ですが、市場には多くの差別化塗料があり、実際に差別化できているメーカーは少ないといえるでしょう。
そこで専門の販売代理店に交渉することで、通常の販売価格から数%程度の値下げを行ってもらえる可能性があります。
「一般塗料」よりも高価格帯で設定されていることが多く、多少の値下げでも削減できるコスト幅は大きいです。
比較的簡単に取り組める方法のため、ぜひ実践してみましょう。
5.広告宣伝費を見直す
案件を受注するためには日々の広告宣伝が欠かせませんが、効果がないのに費用を支払っているケースも多く、手法を見直すことでコストを削減できます。
たとえば目に見えて効果がわからないチラシ配布など、昔ながらの手法ばかりを行っていても、劇的に集客数が改善されることは稀です。
対してWebサイトの運用であれば、消費者の大半がインターネットをとおして情報を調べる現代にマッチしており、オフライン手法よりも高い集客効果を見込めます。
またWebサイトは広告費用が発生せず、一度アクセスを集められる状態を構築できれば、長期的に集客ツールとして活用できるでしょう。
このように広告宣伝では時代に合った取り組みや、自社で集客する術を身につけることが重要となり、コスト以外にも売上に大きく直結します。
外壁塗装業の集客については、以下の記事をご覧ください。
外壁塗装業の利益率を高める戦略3つ
受注方法や販売方法などのポイントを押さえることで、高額商品の販売・受注件数の向上につながり、利益率を高められます。
この項目では外壁塗装業の利益率を高める戦略についてまとめましたので、参考にご覧ください。
- 元請けとして受注する
- 他社との差別化を図る
- パック商品を用意する
1.元請けとして受注する
1つ目のポイントは、元請けとして仕事を受注することです。
紹介や下請けでは、取引先との関係上、自社が価格設定を自由にすることができませんが、自社が元請けとなることで販売価格を定め利益率を高められます。
ただし元請けとして受注するには、集客・営業活動が必須。
いままで下請けでしか仕事を取っていない場合であれば、「どのような顧客をターゲットにするか」から考える必要があります。
そこでおすすめの方法は、個人宅向けのアプローチです。
一般消費者であれば比較的受注しやすく、下請け脱却のハードルは下がるといえるでしょう。
そのため現在BtoBの企業も新しくBtoCに切り替え、ターゲットの幅を広げることが重要です。
2.他社との差別化を図る
2つ目のポイントは、他社との差別化によって自社の価値を高めることです。
利益率の高い外壁塗装業者の特徴として、「価格に見合うだけの価値が備わっている」ことが挙げられます。
そのため市場より高い価格帯でも、価値を感じる顧客から契約を獲得できる点が最大の強みといえるでしょう。
差別化すべきポイントは複数ありますが、顧客ニーズを踏まえながら「求められること」の分析が大切。
差別化の例
- アフターサービス・保証制度の充実
- 企画力・提案力の高さ
- レスポンスの早さ
既存顧客から「自社を選んだ理由」を聞くことも効果的なため、ぜひ取り組むことをおすすめします。
3.パック商品を用意する
3つ目のポイントは、パック商品を用意することです。
外壁塗装は見積もりをして初めて料金を知るケースが多く、不透明な料金になかなかお問い合わせまでのハードルが高いと感じている顧客はたくさんいます。そのため「100m²の塗料は30万円」「屋根とのセットで10%オフ」など目安となるパック商品を用意することで、顧客は問い合わせを気軽に行いやすくなるでしょう。
またパック商品を複数用意することで、あるパック商品が選ばれやすくなるなど、心理学を用いたマーケティング戦略も行えます。
松竹梅の法則
商品を3つの価格帯に分けると、真ん中の価格帯が選ばれやすくなる法則
このようにパック商品を用意するだけで複数のメリットが得られるため、過去の事例から一般的な依頼時の価格帯を明確化しておきましょう。
まとめ
本記事では利益を増やせない外壁塗装業者の問題点を分析し、利益率を高め売上をアップする方法を解説してきました。
利益率を改善するためには「売上向上」と「コスト削減」のどちらかに取り組む必要があります。
ただし急な価格改定はかえって受注件数を減らす可能性があるため、まずは自社が提供できる価値を強化することから意識しましょう。
またパック商品の有無など心理学を用いた戦略も売上アップにつながりますので、積極的に取り組むことをおすすめします。