コロナ禍のような状況になると、競合との差別化や自社ファンの存在によって業績は大きく変化します。とくに中小企業では自社独自の強みを打ち出すことが重要となり、そのためにはブランディングへの取り組みが大切です。
- 「ブランディングについてよくわかっていない」
- 「ブランディングって何をすれば良いの?」
と悩まれている中小企業の経営者やWeb担当者の方も多いでしょう。
そこで本記事では、中小企業にブランディングが必要不可欠な理由をピックアップし、取り組むべき4つの施策をまとめました。
中小企業のブランディング事例や失敗する要因をまとめ、成功につなげる秘訣をお教えします。
中小企業はブランディングしやすい?その理由とは
ブランディングと聞いてTVCMや大々的な広告など、大規模な施策が思い浮かんだ方も多いでしょう。
しかしブランディングは費用をかければ成功するというわけではなく、コンセプトをしっかりと打ち出すことが重要です。また中小企業にこそ必須の取り組みとなり、大手企業に唯一対抗できる手段と言っても過言ではないでしょう。
ここでは中小企業にブランディングが必要な理由について解説していきます。
競合との差別化
日本にある企業のうち約9割は中小企業といわれており、どの業種においても数多くの競合が存在します。このようななかで資金力・人材力に差がある大企業を相手にするのであれば、基本的に商品・サービスの価格を下げることしか対抗できないといえるでしょう。
そこで中小企業の取り組むべき戦略がブランディングになります。
ブランディングでは自社の魅力や特徴を表現することで、大企業とは異なるポジションを確立できます。自社イメージが定着化すれば、他社と比較されることが減り、価格競争に巻き込まれないといったメリットも。
このようにブランディングは活用次第で大手企業に勝つことも可能なため、中小企業にとって必須の取り組みといえるでしょう。
自社ファンの獲得
企業を成長させるうえで、売上を伸ばすことは必須です。
十分な予算を確保できているのであれば、広告プロモーションによって新規顧客を獲得し続けられますが、中小企業ではなかなか予算をかけられないケースが多いといえるでしょう。
しかしブランディングを活用することで、継続的に商品・サービスを購入してくれるリピーターの獲得が可能になります。なぜならブランディングをとおして「自社ファン」となるユーザーが増え、自社商品を目的にする「指名買い」が増加するからです。
また中小企業は大企業よりも従業員数が少ないため、ブランディングを行いやすい点も強み。ブランディングでは社内で共通認識を持つ必要性があるため、従業員数が少ないほどスピード感をもった取り組みが行なえます。
中小企業がブランディングを行うメリット
つづいて中小企業がブランディングを行うことで得られるメリットについて、以下の3点から解説していきます。
- 宣伝広告費・営業コストが削減できる
- 従業員のモチベーションが向上する
- 人材採用が行いやすくなる
1.宣伝広告費・営業コストが削減できる
1つ目のメリットは、いままで必要としていた宣伝広告費や営業コストを削減できることです。
ビジネスを拡大するうえで、広告を活用したプロモーションや、営業部署による新規開拓は欠かせない施策となります。
しかしブランディングをとおして自社の指名買いを増やせれば、自社が積極的に営業活動を行わなくても、顧客から勝手に求めてくる状態がつくれます。
そのため広告費として活用していた予算を新規事業に活用できるなど、新しい挑戦を行うこともできるでしょう。
また営業であれば従業員のリソース削減にもつながるため、ほかの業務に時間を割くことができ、企業全体の生産性アップにもつながります。
2.従業員のモチベーションが向上する
一般的にブランディングと聞くと、顧客に向けた企業のイメージ戦略と捉えられますが、社外に加えて「社内に向けたブランディング」も存在します。
後述で紹介する「インナーブランディング」とも呼ばれており、自社の企業理念・ブランド価値を社員に浸透させる取り組みのことです。
企業は「人」によって成り立っており、授業員の活躍次第で成長率は変化します。そのため従業員のやる気がない状態が続けば、企業全体の生産性が下がり、業績は悪化する要因となるでしょう。
対してブランディングによって「従業員の企業に対する理解」が深まれば、企業理念に沿った行動や意識改革に期待ができます。
営業部では自信をもってお客さまにプレゼンができるなど、社外に対する行動にも改善が見込められるため、最終的に企業の成長につながっていきます。
3.人材採用が行いやすくなる
自社をブランド化することで企業イメージを定着させるブランディングでは、採用活動でも効果を発揮します。
- 求職者からの応募数を増やせる。
- 自社の経営理念に理解した求職者が集まる。
- マッチ率が向上し、採用後の退職を減らせる。
近年では労働人口の減少が原因となり、中小企業では人材採用を行うことが難しくなっています。しかしブランディングが確立できている企業であれば、このような状況下でも応募者数を増やせます。
また自社を理解をした人材が集まりやすいため、採用後も「すぐに退職してしまう」といったリスクが減り、採用コストをかけずに人材雇用をすすめられる点がメリットです。
中小企業が取り組むべきブランディング施策4選
ブランディングと一口にいっても、顧客に向けたものから社内に向けたものまで、さまざまな施策があります。ここでは代表的な4つのブランディング施策を紹介していきます。
- アウターブランディング
- インナーブランディング
- SNSブランディング
- 採用ブランディング
1.アウターブランディング
アウターブランディングとは、企業が「顧客や消費者」など社外に対して行うブランディング活動のことです。
アウターブランディングの目的
- 企業・サービスのイメージ戦略
- 競合との差別化
- 自社ファンの獲得
一般的にイメージされている「企業CM」などをはじめ、ホームページを活用した「Webブランディング」など、さまざまな施策が存在します。
主に自社の認知度を高めることが目的となりますが、最終的には競合との差別化や、自社ファンの獲得につながる施策。またアウターブランディングでは、統一感のあるブランド戦略が重要となり、なかでもホームページを活用したWebブランディングが欠かせません。
なぜならCMや広告などでユーザーへ興味を持たせたとしても、一度はホームページへアクセスしてくることが大半だからです。そのためまずはホームページのイメージから整えるようにしましょう。
2.インナーブランディング
インナーブランディングとは、企業が「従業員」に向けて行うブランディング活動のことです。
インナーブランディングの目的
- 従業員のエンゲージメント向上
- 従業員の定着化
- 社内の生産性向上
従業員エンゲージメントとは「会社への貢献」「愛着心」など従業員が自発的に学んでいく状態を指し、エンゲージメントを向上させることで、結果的に企業全体の生産性向上につながります。
また近年は企業の離職率が上昇していることもあり、インナーブランディングによる従業員の定着化は欠かせない要素。中小企業ではかんたんに新しい人材採用を行えないため、社外に加えて社内に対するブランディングも欠かせないポイントになります。
3.SNSブランディング
SNSブランディングとは、SNSを活用したブランディング施策のことを指し、アウターブランディング・インナーブランディングの両方として活用されています。
SNSはユーザーと近い距離でコミュニケーションを取れるため、企業らしさを伝えやすい点が最大の特徴。また「いいね」「シェア」による投稿の拡散も狙えることで、認知度向上にもつながりやすく、ブランディングとは非常に相性が良い施策といえるでしょう。
とくに近年ではショート動画がトレンドとなっており、InstagramやTikTokを活用している企業も増えています。ブランディングの目的によって投稿内容を変化させる必要はありますが、若年層をターゲットにする際はSNSブランディングの活用がおすすめです。
4.採用ブランディング
採用ブランディングとは自社で働くことに魅力をもつ「ファン」を増やすため、求職者や応募者に向けて、自社の特徴や働きやすさについて発信していくブランディング施策です。
一般的な採用活動では、多くの求職者を集めたなかから、自社にマッチする人材を選ぶ流れとなっていました。求職者が多く集まる場合は問題ないものの、近年は求職者数が減少していることもあり、なかなかマッチする人材を見つけられないことも。
しかし採用ブランディングを実施した場合、全体の応募者数は減少してしまいますが、最初から自社を理解している求職者が集まります。そのため企業が求める人物を採用しやすく、採用後も長期的に働いてくれる傾向が高いといえるでしょう。
中小企業のブランディング成功事例3選
つづいて中小企業のブランディングによる成功事例について紹介していきます。
1.星野リゾート
出典:星野リゾート
星野リゾートは開業から100年以上の歴史をもち、複数のサブブランドから全国で旅館・ホテルの経営をおこなっている企業です。ターゲット別に5つのサブブランドを用意することで、さまざまなニーズの顧客に対応している点が特徴。
なかでも「圧倒的非日常感」を求めた「星のや」は、ラグジュアリーな様子がInstagramなどで多く投稿され、高級旅館として高い人気を集めています。また若者をターゲット層としている「BEB軽井沢」では、SNS上でしか告知を行わない方針をとっており、ターゲット層に合わせたブランディングを実施。
写真や動画で映える「旅館・ホテル」の強みを最大限に活かすため、SNSブランディングに力を入れている事例となります。
2.USJ
出典:USJ
2018年には東京ディズニーランド・シーをおさえて、日本一の集客力をもつテーマパークに選ばれた「USJ」は、ブランディング戦略によって売り上げ低迷からV字回復した成功事例です。
オープン当初はハリウッド映画の世界観を表現していたものの、ターゲット層が狭く、集客数の低迷に悩んでいまいた。そこでUSJが行ったことは「家族で楽しめるテーマパーク」として、エンターテイメント性を重視したブランディングに切り替えたことです。
また若年層には「友人との絆を深める場」など、年齢に沿ったコンセプトを提示。その結果ターゲットは大きく広がり、いまでは幅広い年齢層から人気のあるテーマパークに生まれ変わっています。
3.小松製菓
出典:小松製菓
1948年創業、煎餅を日本一販売している小松製菓は、従業員を大切にする企業理念から多くの求職者を集めているブランディング事例です。
小松製菓では以下のような取り組みを行うことで、従業員の方が働きやすい環境を提供。
- 正社員・パートをとわずに毎月1万円の保育手当を支給
- 希望制で70歳まで勤務可能
- 定年までに20年以上勤務した社員は、独自の「小松年金」が支給される
定年後まで働いている方の面倒を見てくれる会社として、現代においても若年層から人気の高い就職先として知られています。
日々の給与面や福利厚生なども大切ではありますが、小松製菓のように長期的なサポート、社員の面倒を見るという体制は非常に参考になる要素といえるでしょう。
中小企業のよくあるブランディング失敗例
最後にブランディングを行う際に注意すべき点を2つ紹介いたします。以下の点に注意することでブランディングの成功に近づくため、ぜひ意識して取り組みましょう。
- 経営陣だけでブランディングを決めてしまう
- ブランディングに沿わない事業・採用を行う
経営陣だけでブランディングを決めてしまう
ブランディングを実施するうえで、もととなるブランドイメージやアイデアを考えることは重要です。しかし経営陣だけでブランディングを決めてしまわないように注意をしましょう。
なぜならすべてを経営陣で決めてしまうと、従業員は「無理やりやらされている」といった気持ちを感じてしまうからです。仮に従業員が企業イメージに合わないと思ってしまえば、早期の退職にもつながります。
そのためビジョンを共有する場を設けるなど、社員も交えたうえで、企業イメージ・方向性を決めていくようにしましょう。
ブランディングに沿わない事業・採用を行う
アイデアを定めてブランディングを実施した後は、基本的にブランディングに沿わない事業内容や採用を行わないようにしましょう。
例えば「ビジネスとして利益がでるから」「優秀な人材だから」などの理由でブランディングからかけ離れた活動を行うと、ブランディング時に考えた会社の一貫性がなくなってしまいます。
もちろん企業において利益をあげることは重要な要素ですが、ブランディングから外れたことばかり行っていては、顧客・従業員からの信用も失ってしまうでしょう。したがって一つは確固たる軸をもち、どのような状況でもブレないように意識することが大切です。
まとめ
本記事では、中小企業にブランディングが必要不可欠な理由をピックアップし、取り組むべき4つの施策をまとめました。
ブランディングでは社外・社内に向けた対策、そして採用に関する施策など、目的に応じてさまざまな施策があります。すべてを実施することが理想ではありますが、まずは軸となる企業コンセプトを定めることが重要なため、一つに絞って取り組むようにしましょう。