さまざまな企業の事業・経営戦略によく活用されている、SWOT分析。
自社のマーケティングに携わるなかで、
「SWOT分析とは?」
「具体的なやり方やコツを知りたい」
このように悩まれている、工務店のご担当者さまも多いでしょう。
SWOT分析とは、企業や事業の現状を把握するためのフレームワークの一つです。具体的な分析方法やコツを押さえることで、「既存事業の改善点や伸ばすべきポイント」「新規事業の将来的なリスク」などをより洗い出しやすくなるでしょう。
この記事では、工務店の戦略に役立つSWOT分析に関するノウハウを徹底解説!すぐにできる手順5つと活用法を詳しくまとめました。
SWOT分析とは?
はじめに「SWOT分析とは何か?」について見ていきましょう。
SWOT分析とは、企業の経営戦略・事業計画の現状分析を行うための手法のこと。1960年代に考案され、いまもさまざまな企業で取り入れられているフレームワークです。
また、この「SWOT」とは、下記のように内部環境・外部環境における各要素を指します。
内部環境
- S(Strength=強み)
:自社や自社商品・サービスに良い影響を与える内部環境の要素 - W(Weakness=弱み)
:自社や自社商品・サービスに悪い影響を及ぼす内部環境の要素
外部環境
- O(Opportunity=機会)
:自社や自社商品・サービスに良い影響を与える外部環境の要素 - T(Threat=脅威)
:自社や自社商品・サービスに悪い影響を及ぼす外部環境の要素
当分析を用いて他社と比較すれば「自社にとって強みになることは何か」「逆に苦手・脅威になることは何か」などを見出せるぶん、状況に応じて最適な戦略を立案・実行できます。
SWOT分析の目的
次に、SWOT分析を行う目的を詳しくまとめました。
代表的なものとして、下記のようなものが挙げられます。
- 組織目標の設定
- 社員個人の目標設定
- マーケティングプランを策定
- 現状分析の実施
- 将来的に予測される問題の分析
- 新たなビジネスチャンスの分析 など
このように企業の目的により、多彩な目的で活用できる点が特徴でしょう。
工務店でSWOT分析を行う手順5ステップ
SWOT分析で最大限の効果を引き出すためには、正しい手順を踏むことが重要です。この項目では、工務店でSWOT分析を行う手順5ステップを解説していきます。
- 目的を決める
- 外部環境の分析
- 内部環境の分析
- クロスSWOT分析
- 分析結果を活用
1.目的を決める
1つ目のステップは、目的を決めることです。なぜなら、目的が定まっていなければ、的確な要因を分析できないため。
そうなると方向性を誤ったり、答えが見つからなかったりと、結果的に多くの時間を費やしてしまうことになります。
- 自社の利益を伸ばす
- 新商品・サービスを展開
- 新たな店舗を増やす など
最初に“どのような目的を設定するのか”によって、分析する内容も変わります。そのため上記のような目的を設定・共有し、明確にしたうえでSWOT分析を開始しましょう。
2.外部環境の分析
2つ目のステップは、外部環境を分析することです。
ここでいう外部環境とは、「自社外に存在する、自社に対して影響を与える各種要素」を指します。「O(Opportunity=機会)」「T(Threat=脅威)」の視点から要素を見つけ、それぞれ分析していきましょう。
- 市場規模、成長性
- 景気、経済の状況
- 競合他社の最新動向
- トレンド、話題性
- 周辺の環境
- 政治の状況
- 法律 など
外部環境の具体例として、主に上記のようなものが挙げられます。市場全体や国内経済の状況などの大きなものから、競合他者の動向といった小さなものまで規模はさまざまです。
視点を変えると多くの要素を見つけやすくなるため、“多角的な視点を持つこと”を意識しましょう。また自社にとって何がプラス要因(=機会)で、何がマイナス要因(=脅威)なのか見極めることも大切です。
3.内部環境の分析
3つ目のステップは、内部環境の分析です。
ここでいう内部環境とは、「自社内に存在する、経営に対して影響を与える各種要素」を指します。「S(Strength=強み)」「W(Weakness=弱み)」の各視点から要素を探し、それぞれ分析を進めていきましょう。
- 自社の知名度
- ブランド力
- 立地
- 品質、技術力
- 商品、サービスの価格
- 人材
- ノウハウ など
このような観点から、自社の内部的要因を洗い出していきます。分析した外部環境と照らし合わせて、自社のすぐれている部分・不足している部分を見つけていきましょう。
またこれらの要素は、あくまで自社内の“状態・事象”を指します。個人的な感情・意図など、社内の共通認識でない“思い・考え”を含めないよう注意が必要です。
- 主観的に決めるのではなく、外部環境や競合状況を加味する
- 数値やデータを用いることでより正確な分析を心がける
といった点に気をつけましょう。
4.クロスSWOT分析
4つ目のステップは、クロスSWOT分析です。
SWOT分析の要素を埋めただけでは、単に現状分析をしただけに過ぎません。当分析の目的である“具体的な戦略を決める”ためには、「クロスSWOT分析」を取り入れると良いでしょう。
クロスSWOT分析を活用すれば、内部と外部の強みと弱みを掛け合わせ、このようにそれぞれの組み合わせによる“4種類の戦略”を導き出せます。
【図解】SWOT分析とは?やり方から具体例、注意点まで解説 | セールスフォース・ジャパン (salesforce.com)
また各要素の組み合わせに関する考え方、戦略例などは下記をご覧ください。
強み(S)×機会(O)/ SO戦略
「自社の強みを活かし、機会を勝ち取るにはどうすれば良いか?」を考える
戦略例:「ブランド力の高さ(S)」×「ニーズの多さ(O)」=自社のブランド力の高さを訴求ポイントとし、積極的なPR活動を行っていく。
弱み(W)×機会(O)/ WO戦略
「自社の弱点を克服し、機会を勝ち取るにはどうすれば良いか?」を考える
戦略例:「SNSでの集客力が低い(W)」×「ニーズの拡大(O)」=SNS・動画を活用し、自社のブランディングを強化。知名度・認知度を高め、若年層の顧客獲得を狙う。
強み(S)×脅威(T)/ ST戦略
「自社に強みを活かし、脅威に対応するにはどうすれば良いか?」を考える
戦略例:「技術力の高さ(S)」×「需要の縮小(T)」=技術力の高さで選んでもらえるよう、縮小した市場のなかで生き残りを図ることを目指す。
弱み(W)×脅威(T)/ WT戦略
「自社の弱みに関連した、最悪の状況を防ぐためにはどうすれば良いか?」を考える
戦略例:「生産力が低い(W)」×「需要の縮小(T)」=もし独自のポジションが取れない場合は、事業撤退も視野に入れる。
5.分析結果を活用
5つ目のステップは、ここまでの分析結果を活用することです。例えば「SWOT分析によって明確になった自社の訴求ポイントを、マーケティングや採用活動に活かす」といったイメージを持ってもらうとわかりやすいかと思います。当初に掲げた目的に合わせ、具体的な戦略決定までしっかりと分析を重ねていきましょう。
工務店におけるSWOT分析の具体例
ここまで、SWOT分析の手順5ステップについて紹介しましたが、開始するにあたり「このやり方で正しいのか」と不安になるご担当者さまもいらっしゃるでしょう。
そこで、工務店におけるSWOT分析の具体例をピックアップしました。
「S(Strength=強み)」「W(Weakness=弱み)」「O(Opportunity=機会)」「T(Threat=脅威)」、各要素の詳細を下記の表にて詳しくまとめています。こちらもぜひ参考にしてください。
各要素 | 具体例 |
---|---|
S(Strength=強み) | 高品質 ブランド力にすぐれている 原材料から一貫生産体制を保有 発注から完成までが早い 完成後のフォローが手厚い など |
W(Weakness=弱み) | 利益率が低い クレームが多い 営業コストが高い 頼れる技術者が限られている 現場と事務の意思疎通がうまく図れていない など |
O(Opportunity=機会) | 地方都市部での再開発事業への注力 海外市場に成長機会がある コラボ企画が好評 競合他社の倒産が増え、ライバルが減少 入札制度の総合評価方式移行 など |
T(Threat=脅威) | 若者労働者の減少 住宅着工数の減少 人口減少による、国内住宅市場の縮小 原材料費の高騰 遠方工事が増加し、交通費がかさむ など |
いざ「SWOT分析をしよう」と思っても、難しく考えてしまうことも多いのではないでしょうか。しかし上記の表を見てもらうとわかるとおり、まずは箇条書きで書き出してみるとスムーズに分析を進めやすくなります。
“事業全体の課題や問題に照らし合わせて設定すること”を念頭に置き、慎重に議論を進めると良いでしょう。
工務店でSWOT分析を成功させるコツ3つ
最後に工務店でSWOT分析を成功させるためのコツ3つを、詳しく解説していきます。
- 目的を明確にする
- 前提条件を整理する
- 複数の分析手法を活用する
1.目的を明確にする
SWOT分析を行う際は、「なぜ分析を行うのか」という目的を明確にしましょう。なぜなら、目的があいまいな状態で始めても方向性が定まらず、うまく分析が進まないためです。
例えば「自社の売上を上げたい」というぼんやりとしたものよりも、「リピーターを増やす」「客単価を向上させる」といった具体的な目的を掲げると効果的です。
また「自社の現状や環境を把握して、今後の勝機を洗い出したい」という場合は、“強み・機会”をより深く掘り下げる必要があります。
対して「将来的に予測されるリスクを把握し、回避するための方法を知りたい」という場合は“弱み・強み”に加え、“脅威”をそれぞれ照らし合わせることになるでしょう。
このように「何を目的とするか」によって、分析で力を入れるべき部分は大きく異なります。自社に合った分析を行うためにも、目的を明確にしたうえで、チーム・部署内で認識のズレがないかを確認しましょう。
2.前提条件を整理する
SWOT分析を開始する前に、“「誰」の「何」のための分析か”という前提条件を整理しましょう。
前提条件の具体例
- 分析対象は何か
- 競合企業はどこなのか
- 対象の顧客属性は
前提条件があいまいだと、「S(Strength=強み)」「W(Weakness=弱み)」「O(Opportunity=機会)」「T(Threat=脅威)」の結果が大きく変わる可能性も。そのため前提条件を定めないまま分析を進めても、自社に合う施策・戦略を見出すのは難しいでしょう。
3.複数の分析手法を活用する
SWOT分析の4要素を洗い出すために、複数の分析手法を活用すると良いでしょう。
「SWOT分析に慣れていない」という場合、いきなり分析を始めたとしても抽出する情報が偏るおそれがあります。そうなると本来視野に入れるべき重要な情報が抜け漏れたり、重複が生じたりと、正しい戦略を立案・実行できなくなる事態を招きやすくなります。
そこで、あわせて取り入れてほしいフレームワークが「PEST分析」「3C分析」です。
PEST分析
マクロ環境を分析するためのフレームワークのこと。PESTとは「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」を表しており、それぞれの頭文字を取ってPEST分析と呼ばれるようになりました。政治・社会・技術などさまざまな要素を整理することで、外部環境の現状・動向を把握しやすくなります。
3C分析
3C分析とは「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」、3つのCの関係性を明確にして行うフレームワークのこと。それぞれのCにおいて、次のような点を整理していきます。
- 市場・顧客(Customer):市場規模・成長性・顧客のニーズ動向などを把握する。
- 競合(Competitor):競合の特徴・シェア・業界ポジションなどの動向を把握する。
- 自社(Company):自社の強み・企業理念・自社商品やサービスの現状など。顧客のニーズに応じ、「自社が成功するためにはどうすれば良いか」といったその要因を探る。
また、これらのフレームワークとSWOT分析を行う場合は、
- まずPEST分析から行う
- その後3C分析を行う
- 2つの分析でわかったことをSWOT分析に活用
上記のような手順を踏むと、より分析の精度を高められます。企業が目標とする成果を得やすくなるため、複数の分析手法を積極的に活用しましょう。
まとめ
この記事では工務店の戦略に役立つSWOT分析に関するノウハウを詳しくまとめました。すぐに実践できる手順5つと活用法もご紹介しましたが、いかがでしたか?
SWOT分析は自社の経営戦略・マーケティング戦略を立案したり、現状を把握したりするために欠かせない施策です。存分に活用して自社の可能性を広げれば、新たなビジネスチャンスを獲得しやすくなるでしょう。
紹介した手順やコツを参考に、ぜひ自社でもSWOT分析を実践してみてくださいね。