近年、建築業界では人材不足やコロナウイルスなどの影響により、いままでの方法では簡単に仕事を取れない時代となっています。しかしこのような状況でも、ホームページを中心としたオンラインの営業を行うことで、安定した経営が可能です。
本記事では営業方法の変化について考え、設計事務所がいま取り組むべき手法をまとめました。
設計事務所が取り組むべき営業方法とは?
現在、人脈や紹介を軸とした営業活動を行っている設計事務所は多いといえるでしょう。
しかし今後はホームページの活用が欠かせない時代となり、競合他社と最も差がつくポイントと考えられます。
ここでは従来と今後の営業方法を比較し、ホームページが必須の理由について解説していきます。
従来は人脈・紹介営業が中心
設計事務所をはじめ、建築業界では以下のように人脈・紹介営業で仕事を獲得することが従来の方法でした。
- 知人・友人
- 既存顧客
- 法人(不動産・設計事務所との共同)
実際に設計の仕事を受けている方であれば、知り合いが顧客というケースも多いのではないでしょうか。
しかし人脈頼みでは仕事の獲得が不定期となり、受注件数は不安定になってしまいます。
例えば近年のコロナやウッドショックのような出来事があると、紹介がばったり途絶えることもあるでしょう。
したがって安定した経営を行うためには、景気や外部環境に大きく左右されないよう自社の集客力を高めることが求められます。ただし人脈営業も重要な手法の一つとなるため、既存顧客へのアプローチなどは積極的に行うようにしましょう。
今後はホームページの活用が必須
自社の力で集客する方法は複数ありますが、なかでも設計事務所が取り組むべき方法はホームページの活用です。
ホームページの活用が必須の理由
- 顧客の大半がインターネット上で設計事務所を探している
- 他媒体に依存しないため、外部の影響を受けにくい
- 認知拡大から問い合わせまで一連の流れを実行できる
設計事務所ではメインのターゲット層が30代〜40代となり、インターネットを活用している人が大半です。
そのため事務所の自社サイトの有無が企業の信頼に直結すると言っても過言ではなく、会社の顔としてなくてはならないツールになります。
また積極的に自社情報を発信している企業や、ホームページを活用している企業が少ない業界だからこそ、早期に取り組むことで競合と大きな差をつけられるでしょう。
設計事務所の営業方法【オフライン】
まずはオフラインの営業方法について、以下の5つから紹介していきます。
- チラシ・DM
- 電話営業
- コンペ・プロポーザル
- セミナー・交流会
- 勉強会
1.チラシ・DM
チラシ・DMは、路上で配布するチラシやポストに投函するDMなど、多くの設計事務所が一度は経験したことがある営業方法といえるでしょう。
地域密着型で周辺住民の特徴を知っている場合であれば効果を見込めますが、土地勘のない地域ではターゲティングの難しさが特徴です。
また一見費用が安く感じるものの、広告のデザイン費や配布するスタッフの人件費が発生するため、費用対効果には注意をしましょう。しっかりと見てもらえれば認知度の向上につながるため、興味を引くキャッチコピーやデザイン性が重要になります。
またチラシやDMは掲載する情報量が少ないため、自社サイトのQRコードなどを掲載し、ホームページへ誘導することも効果的です。
2.電話営業
電話営業も従来より使われている営業方法となり、興味付けや商談の場を設けることが目的です。
企業を相手に取引する場合には、タウンワーク・SUUMOなどから営業先の獲得が可能。
個人を相手にする場合は事前に顧客リストを作成する必要があるため、イベントなどで顧客情報を入手することが求められます。
また電話営業ではトークマニュアルを用意することで、経験の浅いスタッフでも短い育成期間で実践できる点が特徴といえるでしょう。
ただし電話越しのため、
- アポイントを取ることが難しい
- クレームになりやすい
- スタッフにストレスがかかりやすい
などのデメリット面には注意が必要です。
3.コンペ・プロポーザル
コンペ・プロポーザルは、設計案や設計者情報をとおして依頼先を選定する方法のことです。
一般的な依頼主から地方公共団体・独立行政法人などで活用されている方法となり、以下のように複数の方法が存在します。
- 公開型コンペ:すべての企業に参加権がある
- 指名型コンペ:決められた企業のみに参加権がある
- 公募型プロポーザル方式:提案書をもとに地方公共団体が選定
- 環境配慮型プロポーザル方式:温室効果ガス等の排出削減などを加味しながら選定
入選した場合は実績として紹介できますが、応募者が多く競争率は高いといえるでしょう。
そのため人脈営業と同様に、営業のサブ的な役割で取り組むことをおすすめします。
4.セミナー・交流会
セミナー・交流会は、自社が主催となって行う場合や他社のイベントに参加してブースを出展するなど、さまざまなパターンがあります。
他社のイベントではプロデュース会社やメーカー会社が考えられますが、参加者の目的は事前に把握しておきましょう。住宅セミナーといっても設計を求めていない人が集まるセミナーであれば、無駄な時間となってしまいます。
また顧客と対面して会話をするため、わかりやすく話すことや相手の声をしっかり聞くなど、円滑なコミュニケーションが必要です。競合も多く出展しているため、自社のコンセプトや魅力を上手にアピールできれば契約につながるでしょう。
5.勉強会
勉強会では「設計や建築に関する悩みや相談」から顧客の疑問点を解決し、最終的に自社サービスへとつなげる営業方法です。
顧客の満足度を高めることが重要となり、専門家として質の高い内容を伝えることが求められます。
また住宅設計ではデザインによって企業の特徴が大きくあらわれるため、建築士・設計士の想いや自社ならではのアピールポイントから共感を得ることも大切。そのため一度のセミナーでクロージングをせず、まずは自社ファンを作り、長期的に育成するといった活用も効果的です。
設計事務所の営業方法【オンライン】
つづいてオンラインの営業方法について、以下の4つから紹介していきます。
- Webサイト運用
- SNS運用
- Web広告
- オンラインセミナー・相談会
1.Webサイト運用
Webサイト運用はオフライン・オンライン集客の軸として活用でき、費用をかけずに自動集客ツールとして活用できる点が強みです。
例えばチラシを配布した顧客や電話営業によって一度接触したユーザーも、あとから自社に興味を持つ可能性はあります。このような場合に自社サイトを運用していれば、ユーザー自らインターネットで検索し、サイトをとおして問い合わせをしてくることもあるでしょう。
またチラシでは記載できない過去の事例やスタッフの紹介なども自社のサイトでは発信でき、画像や動画をとおして魅力的に自社のアピールができます。
ほかのオンライン集客においても最終的にはホームページへつなげる導線が多いため、自社について詳しく知ってもらう媒体として、Webサイトは積極的に活用しましょう。
2.SNS運用
SNSは画像や動画をメインコンテンツとする媒体が多く、デザイン性からアピールする設計事務所に適した営業方法です。
例えば、
- Instagram:完成した住宅の内装写真を投稿したい場合
- YouTube:動画をとおして解説を踏まえながら説明したい場合
など、伝えたい内容や訴求ポイントによって、活用すべきSNSは異なります。
またWebサイト単体の場合、検索上位に表示されなければ認知を増やせませんが、SNSは拡散力があるため、フォロワーが少なくても多くのユーザーに閲覧される可能性があります。
そのため投稿する内容や質次第で認知を一気に広められる点は、SNS最大の強みといえるでしょう。
設計事務所のSNS集客について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
3.Web広告
Web広告は費用を支払うことで広告出稿ができ、WebサイトやSNSと比べて短期的に成果を見込める営業方法です。
設定後は早ければ数時間で広告が出稿され、ボタンひとつで広告の公開・停止を操作できる点が特徴。
オフライン広告では掲載期間や時間が定まっていることが多いため、自由に調整できる点はWeb広告の強みです。
また広告の種類が豊富にあることから、
- ディスプレイ広告(一定のWebサイト内):こだわりのある設計を行たい人向け
- SNS広告:オシャレなデザインの設計
- YouTube広告:インパクトのある印象を与えたい
など、ターゲットの年齢層や趣味に合わせて選択することも可能です。
4.オンラインセミナー・相談会
オフラインの営業方法でもイベントや勉強会がありますが、近年ではインターネット上で行うオンラインセミナー・相談会が主流となっています。
リアルの場と比べて時間や場所の制約が少ないため、いままで対応できなかった顧客ともコミュニケーションを図れることが強みです。
またオンラインであれば画面共有をしながら大人数を相手にでき、営業の効率性を高められるでしょう。
撮影した動画の2次利用も可能なため、営業スタッフ不足で悩んでいる企業は特におすすめの営業方法です。
業界で勝ち抜く設計事務所の営業方法・戦略
ここでは営業を実践する際の戦略について、以下の4つから解説していきます。
- ターゲットを絞ったアプローチ
- 強みを活かした他社との差別化
- 顧客のニーズ変化に対応する
- オンラインとオフライン施策を組み合わせる
1.ターゲットを絞ったアプローチ
営業を行う際は、かならずターゲットを絞ったうえでアプローチしましょう。
なぜなら顧客は具体的な内容に共感することで、はじめてアクションを起こすからです。
例えば「家を買いたい人」というニーズを条件とした場合、訴求内容は抽象的となり、行動に促すアプローチが行えません。そのため「住宅のなかでも何の素材を求めているのか」や「どの価格帯であるのか」など、以下の観点からターゲティングを図ることが重要です。
- 市場の規模・成長性
- 顧客の属性
- 競合の状況
また上記に加えて参入障壁を踏まえると、競合が簡単には真似できないオリジナリティを生み出せます。
2.強みを活かした他社との差別化
多くの設計事務所・工務店・ハウスメーカーがいる住宅市場から仕事を獲得するには、他社にはない魅力的な特徴が必須となります。差別化やポジショニングといい、市場の立ち位置を明確化することで自社のブランド力を確立することが目的です。
具体的な考え方としては、
- 得意としているデザイン
- 住宅設計のテーマやジャンル
- 対応している施工範囲・業務内容
など、強みとなる要素を書き出して考えましょう。
独立したての企業であれば、最初から強みを考えることは難しいかもしれません。
しかし実績が伴うにしたがって強みは自然と生まれるため、まずは抽象的でも要素を考えることが重要です。
3.顧客のニーズ変化に対応する
従来までは商品・サービスの宣伝方法や提供している企業が限られていたため、顧客は同じ商品を買うことが一般的でした。
しかし現代では企業数が多く、市場には数え切れない商品・サービスが流通しています。
設計事務所においても大手企業から中小まで、企業数は膨大といえるでしょう。
そのため顧客によってデザインや立地などの幅広いニーズがあり、企業は顧客に合わせたサービスの提供が重要となります。
特に現代はコロナの影響によって在宅勤務に対応した設計が求められるなど、ニーズは日々変化しています。したがって営業時は顧客のニーズを丁寧に把握し、時代に対応した提案を意識していきましょう。
4.オンラインとオフライン施策を組み合わせる
前述ではニーズ変化についてでしたが、ユーザーが企業を知るきっかけや興味をもつ経路も多様化しています。
例えばリフォーム設計を行う際のターゲットは高年齢層となり、チラシやDMに効果があるかもしれません。
対して新築住宅の設計であれば年齢層は若く、インターネットを軸とした営業が効果的といえるでしょう。
このように明確に分類できる場合は簡単ですが、実際はより多くの経路が考えられます。
そのため一つの営業方法に絞ることなく、オフラインとオンラインの組み合わせなど、複数の施策からアプローチしていきましょう。
まとめ
本記事では営業方法の変化について考え、設計事務所がいま取り組むべき手法を解説してきました。
従来は人脈頼みの営業でも仕事を獲得できましたが、今後はオンライン施策を中心に自社で集客力を高めることが求められます。
なかでもホームページは顧客からの信頼獲得にもつながり、営業では欠かせないツールの一つです。
競合他社と差をつけるポイントにもなるため、早期に活用できる環境をととのえましょう。