コロナ禍などで受注が減少している解体業者も少なくないでしょう。
経営が不安定な状態が続くと、
「このまま続けて大丈夫だろうか…」
「将来の動きを予想して、いまから対策したい」
「これから解体業で独立しようと思っているが、やれるか心配」
など、解体業界の動きや将来性を考えることも多いと思います。しかし将来をある程度予想できれば前もって準備し、他社よりも優位に経営をすすめられるでしょう。
そこで本記事では解体業界について、現状やコロナ禍の状況をまとめ、将来性を考えてみたいと思います。
今後も続くと思われるコロナ禍で成功するためのコツについてもお教えしますので、先行きに不安を感じている解体業の経営者、これから解体業で独立・開業しようと思っている方などは参考にしてください。
解体業者の業界とは?
解体業とは、建物や家屋を取り壊して撤去する工事のことを指します。扱う建物は一般住宅から高層マンションに至るまで、業者によって幅広く請け負う点が特徴です。
また解体業者はゼネコンと呼ばれる大企業から、元請け下請けを行う中小企業、そして個人で営んでいる業者の3パターンに分類されます。業者によっても木造住宅が得意な企業があれば鉄筋コンクリートが得意な企業まで、得意不得意にも違いがあるでしょう。
ここでは、解体業の業態と職種について解説していきます。
解体業の業態
解体業の業態では、以下の5つに分類されます。
1.解体工事専門
- 解体工事専門の業者は、アスベストなど特殊な業務だけを請け負うケースが多いです。
- アスベストは有害な物質のため、撤去作業においても専門的な知識や経験が求められます。
- ビルの解体現場などであれば、足場組みを専門とする業者も存在します。
2.収集運搬のみ
- 収集運搬の業者は、解体工事で発生した廃棄物の運搬のみを請け負います。
- 基本的には知り合いの業者から依頼される形となり、不用品回収業者が行っているケースも多いといえるでしょう。
3.解体工事から中間処理まで
- 解体工事では発生した廃棄物を処理することが義務付けられています。
- しかし工事から中間処理までを自社で一貫して行うためには、専用の重機や処理場を所有しなければいけません。
- まとめて請け負う業者は規模が大きいものの、総合的な費用で考えると安い価格帯が実現可能です。
4.解体工事から収集運搬まで
- もっとも一般的な解体業者の業態が、解体工事から収集運搬までを請け負うケースです。
- 工事で発生した廃棄物を処理場まで運搬しますが、中間処理は別の業者に委託します。そのため企業規模も個人経営から大企業まで、幅広い点が特徴です。
5.下請けに丸投げ
- 解体業者のなかには自社で一切工事を行わず、下請けに丸投げで依頼するブローカー的役割も存在します。
- 取引先さえあれば全国各地から仕事を受注できるため、多くの依頼を獲得できる点が強みです。
- 売上を高めるには下請けの作業管理や連携を行いつつ、同時に複数依頼をすすめる必要があります。
解体業の職種
解体業の職種では、以下の5つに分類されます。
1.作業員
- 作業員は解体工とも呼ばれ、重機を使用した建物の取り壊しや手作業の業務など、現場の前線に立ってすすめていく役割です。
- 解体工事の中心的な役割となり、一般的な解体業の職種といえるでしょう。
2.重機運転手
- 重機運転手はオペレーターとも呼ばれ、現場で重機を操作して取り壊しをすすめていく役割です。
- 基本的に壁やコンクリートの取り壊しを行います。また資格保有者のみが扱える重機を操作するため、専門的な知識や経験が必要です。
3.鳶工
- 解体業の鳶工は足場鳶とも呼ばれ、工事前の足場や養生シートの設置をすすめていく役割です。
- 現場では工事中の騒音トラブルが問題視されており、防音パネルなども設置します。
- 工事前後に関わる職種のため、工事中は作業員や重機運転者が軸となって作業を行います。
4.現場監督
- 現場監督は解体工事の現場責任者として、スケジュール管理や進捗確認を行っていく役割です。
- 天候や作業の進捗によっては工事の延期もあるため、施主や建設工事会社とのやり取りも行います。
- 現場の安全管理やクレーム対応なども業務となるため、適切な状況判断や丁寧な対応が求められます。
5.営業
- 顧客からの依頼を受注するためには、営業スタッフによる営業活動が欠かせません。
- 仕事内容は新規開拓や顧客からの問い合わせ対応など、見込み顧客へのアプローチを行います。
- 直接人と関わる職種のため、コミュニケーション能力をはじめとした対人スキルが重要です。社長や経営者がみずから行っている企業もあるでしょう。
解体業界の動向とは?知っておきたいポイント3つ
解体業は建物の老朽化や空き家の増加で、今後需要が高まる業界と考えられます。
また実際に建設業法が改正されるなど、目に見える形で解体業の重要性を実感できる点が最大の特徴です。
ここでは、解体業の動向について3つのポイントから解説していきます。
1.高度経済成長期の建物が老朽化
高度経済成長期の建物が老朽化していることで、今後は解体業界の需要が高まると考えられます。
日本では1950年代〜1970年代までの高度経済成長期時代に、企業が積極的に設備投資を行ってきた背景によって多くの建築物が生まれました。
しかし現在では成長期時代から約50年程経過し、当時建てられた建築物の大半は老朽化が進んでいます。
老朽化した建築では以下のような問題が考えられ、放置しておくことは非常に危険です。
- 自然倒壊の危険性
- 害虫・害獣が住み着く危険性
- 増税・罰金が課される
- カビが生えることで建物が劣化する
そのため老朽化した建物は建て替えや取り壊しを行うことが多く、解体業の需要は増加傾向と予想されるでしょう。
2.空き家の増加
解体業界の需要が高まると考えられる理由には、空き家の増加も挙げられます。
5年毎に調査を行っている総務省のデータによると、以下のように空き家率が推移しています。
引用:土地カツnet
今から約60年前の1963年では空き家率が全体の2.5%であるのに対し、直近の2018年では全体の13.6%にまで上昇。
上記のグラフを見ると、年々空き家率は増加していることが確認できます。
また日本では少子高齢化や人口減少が問題となり、2030年には空き家率が約30%になると予想されています。
空き家が増えると景観悪化による地域への悪影響や犯罪の温床になるといったリスクが潜んでおり、空き家対策として解体工事への依頼は増えるでしょう。
しかし現状空き家が増加している理由には解体費用の負担が挙げられるため、顧客と業者のバランスを考えたうえでの価格設定が重要なポイントです。
3.建設業法の改正
前述のとおり、建物の老朽化や空き家の増加によって解体業の重要性は増している状態となります。
そのため従来は「とび・土木工事業」に含まれていた解体業でしたが、2016年に建設業許可業種の29種目めとして独立しました。
建設業許可の有無
1件の代金が税込500万円以上(建築一式の工事は1,500万円以上)の工事のみを請け負う場合は、建設業許可が必要。
資格要件
建設業許可を受けるには、監理技術者の資格(1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士など)と主任技術者の資格(監理技術者の資格、2級土木施工管理技士など)が必要。
経営業務の責任者要件
- 役員、支店長、営業所長:解体工事の経験5年以上
- 役員以外:解体工事の経験7年以上
このように法改正によって解体業で必要な資格や要件は細かく定められています。工事費用によって許可の有無は異なるため、いま一度確認するようにしましょう。
コロナによる解体業界への影響
近年の社会全体に大ダメージを与えた新型コロナウイルスは、解体業でも以下のような影響を受けています。
- 7割の工事会社が売上減少
- 工事減少による競争の激化
すぐにコロナ禍が改善されるとは限らないため、時代の流れを把握しながらコロナに打ち勝つ経営を意識しましょう。
7割の工事会社が売上減少
コロナの影響によってハウスメーカーや工務店からの仕事が減少し、多くの解体工事会社で売上が減少傾向となっています。
実際に解体工事会社を調査した資料がこちら。
引用:クラッソーネ
上記は「新型コロナウイルスによる業績の影響はありますか?」という質問に対する回答です。
全体の9割の会社で影響があると答えており、感染症が今後も続くようでは業績への影響はより強くなると考えられます。
引用:クラッソーネ
上記は「新型コロナウイルス感染拡大による解体工事売上の増減見込みをお答えください」という質問への回答です。
1割〜3割の減少が最も多いものの、次いで3割〜5割の減少と、影響は非常に大きいといえるでしょう。
またコロナの影響によって社会全体のオンライン化がすすみ、いままで関与していなかった企業ほどダメージを受けています。今後もオンライン化はすすむと予想されるため、早期にオンラインへと移行し時代の流れに沿っていきましょう。
工事減少による競争の激化
コロナの影響で受注案件の延期や中止が増えたことにより、工事可能な案件はかぎられた数しかありません。そのため多くの企業が少ない案件を奪い合う状況が生まれ、競争が一気に激化した状態となりました。
特に解体業では昔ながらの紹介営業に頼ることが多く、自社で集客する経験やノウハウの少ない企業が多いといえるでしょう。
しかし今後市場で生き抜くためには、昔ながらの人脈を活かした営業スタイルでは限界があります。
あくまで自社の力で新規の顧客を獲得するスキルが求められるため、時代に合ったオンライン集客への取り組みは必須となります。
なかでもホームページは集客面だけでなく顧客からの信頼獲得にも効果的です。
定期的にコンテンツを発信し続けることで集客の自動化にもつながるため、最初に取り組むべき施策としておすすめします。
解体業界の将来性とは?
解体業界は将来的にも仕事は増え続けると予想されます。
ただし求められる知識や技術力も高まっているため、多くの仕事を獲得するには企業の成長も欠かせません。
ここでは解体業の将来性について、3つの観点から解説していきます。
1.少子高齢化による空き家の増加
現在もすでに少子高齢化による空き家は増加していますが、近い将来、空き家数はいま以上に増加すると考えられます。
なぜなら団塊世代と呼ばれている年齢層があと5年〜10年ほどで75歳以上になり、超高齢化社会となるからです。
少子高齢化のまま人口の多い団塊世代の方が亡くなると世帯数は減少し始め、空き家は一気に増えていきます。
また空き家を減らすために国が解体を推奨していることもあり、今後解体ラッシュと呼べるほど解体業の需要が高まるといっても過言ではありません。
2.イベント開催に向けた都市整備
日本で主要なイベントを行う際は、都市整備として解体現場が増加します。
特に近年では2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博など世界的に大きなイベントが多く、解体分野は活躍の幅が広いといえるでしょう。
実際東京オリンピック時は国立競技場といった大型施設をはじめ、隣接する都営霞ヶ丘アパートや外苑ハウスなど、周辺の再開発も同時に行われました。
選手村はオリンピック後も住宅として活用できるように作られていますが、1万戸という大きさからいずれは空き家が多く解体する状況になるでしょう。ほかにも主要都市では都市開発がすすんでいることもあり、建物建設にともなう解体作業は増え続けると考えられます。
3.高度な専門業種へ変化
解体業では将来的な需要が見込めるものの、新しく生まれる建築物への知識や技術など、今後は専門性が求められるようになります。
例えば新設された「解体工事業」においても、
- 実務経験や資格を有した人の配置
- 現場と営業所の技術者は兼任できない
など規模や従業員数に関係なく、細かいルールが設けられています。
そのため資格保有者や現場経験が豊富なスタッフは、いままで以上に重宝される存在になるでしょう。
また産廃処理場不足や処理コストの高騰など、解体業の課題解決に必要な環境問題の知識も重要です。
このように需要があるなかでも求められることは日々変化しているため、常に先を見据えて行動していきましょう。
まとめ
本記事では解体業界について、現状やコロナ禍の状況をまとめ、将来性を紹介していきました。
コロナ禍で売上が減少している企業が多い解体業界ですが、建物の老朽化や空き家の増加など将来的には需要が多く、売上を高められるでしょう。ただし建設業法の改正など、いままでにはないルールや仕組みも生まれているため、適切に対応することが重要です。
また現在・将来を問わずに自社で集客する力は必須のため、Webサイト運用やデジタル化は積極的に取り組みましょう。