近年社会に大きな影響を与えた新型コロナウイルスは、工務店・住宅業界にもさまざまな変化をもたらしました。
そこで今回は、気になる工務店・住宅業界について、開業や集客を考えている工務店の担当者・経営者の方向けに
- 「業種」「職種」
- 「コロナによる影響」
- 「将来的な業界の展望」
などの情報をまとめてみました。
工務店の集客増加や売上向上を行うためには、業界の動向について把握しておくことが重要です。また、今後はコロナを加味したうえでの住宅づくりが求められるでしょう。
工務店・住宅業界のコロナ禍の変化、そして将来性についても解説していきますので、これを読めば住宅業界の基本から最新の動向までがわかります!
工務店・住宅業界とは?
工務店が属する住宅業界とは、「顧客に合わせた注文住宅」や「メーカー企画の分譲住宅」など、一戸建てを軸にした業態を指します。
住宅業界のなかでは26%が大手メーカーとなり、残りの74%が中小規模の工務店です。
しかし業界全体をとおして従業員の高齢化や後継者不足などから、事業者数は年々減少傾向にあります。
ここでは工務店・住宅業界について、業態や業種から詳しく解説していきます。
住宅業界の業態
住宅業界の主な業種は、以下の5つです。
- ハウスメーカー
- 工務店
- 不動産・デベロッパー
- 総合建築業・ゼネコン
- 建築設計事務所
1.ハウスメーカー
ハウスメーカーとは住宅の建設から販売を行う一般的な業態の企業です。全国や広いエリアに支社を持ち、施工エリアは広域となることが特徴。
独自ブランドを展開していることで住宅のバリエーションは多いものの、プランや設備には制約があります。
ただし資材を工場生産している割合が高いため、施工の品質は均一に保たれている点が強みです。
2.工務店
工務店はハウスメーカーよりも小規模な企業となり、工事に関わる職人の手配や管理を行う業者を指します。
社長と職人で構成される工務店からフランチャイズの加盟店まで営業スタイルは多岐にわたり、施工エリアは地域に密着した形が多いといえるでしょう。
ハウスメーカーでは制約が多いですが、工務店では柔軟に対応できる点が強みです。
ただし会社によって住宅のデザインや工法に差があるため、品質にはバラつきがあります。
3.不動産・デベロッパー
不動産・デベロッパーとは、マンションやビルなど大規模な宅地開発を行う、開発専門の業者を指します。
具体的な事業内容はこちら。
- 街の再開発
- リゾート開発
- マンション・大型商業ビルの開発
- 大規模場な宅地造成
またデベロッパーでは建設の企画から管理運営がメインとなり、実際の建設作業は建築会社に依頼すること大半です。
基本的には上記のような大規模な事業が多いですが、なかには住宅建築を行うデベロッパーも存在します。
4.総合建築業・ゼネコン
総合建築業であるゼネコンは、公共施設や大型マンションなど、大型の建物を建設する業者です。
一般的にはデベロッパーや民間企業からの依頼を受け、下請け業者へと発注する流れになります。
またゼネコンのなかにも規模や売上高によって3種類に分類されます。
スーパーゼネコン
売上高が1兆円を超え、他社より資本力や売上高が圧倒している企業のこと。
準大手ゼネコン
売上高3,000億円~4,000億円以上となり、高層マンションや商業施設の事業を手掛ける。
中堅ゼネコン
売上高1,000億円前後の企業を指し、扱う事業も地域密着型であることが多い。
5.建築設計事務所
建築設計事務所とは、建築主の要望を聞きながら建物の設計を行う企業のことです。
以下の2種類に分類されます。
組織系設計事務所
公共施設など大規模な建築設計を組織単位で行う企業。
意匠設計・構造設計・設備設計の3部門を自社内に抱える。
アトリエ系設計事務所
建築家個人が軸となって建築設計を行う企業。一般的な住宅から小規模な公共施設などがメイン事業になる。
建築設計事務所では提携している工務店に施工を依頼することが多いですが、企業によっては施工管理までを行ないます。
住宅業界の職種
住宅業界の主な職種は、以下の4つです。
- 営業
- 設計
- 施工管理
- 積算
1.営業
営業は住宅を販売することがメインとなり、顧客の新規開拓や展示会でのサポートなどから関係性を構築していきます。
また建築主の要望を踏まえたプラン提案から施工の進捗状況の連絡、そして引き渡し後のアフターサポートなど業務内容は多岐にわたります。
顧客ともっとも身近な存在になるため、ハウスメーカーや工務店では重要なポジションといえるでしょう。
2.設計
住宅業界における設計では、建築物の設計図面を作成することがメイン業務です。
営業から伝達された建築主の要望をもとに、顧客に適したプランを作成していきます。
またハウスメーカーのようにプランが定まっている場合は、建物の配置や間取りの計画が軸といえるでしょう。
基本的にはデスクワークとなりますが、場合によっては現場での打ち合わせや敷地調査なども行なわれます。
3.施工管理
施工管理とは、施工予算から現場での安全面など、施工に関わるすべてのことを管理する職種です。
間違えやすい職種に「現場監督」がありますが、現場監督では作業員の指示出しや工事の進捗など、現場に関する管理が中心となります。
そのため施工管理では材料費の原価管理や役所への手続きなども行う必要があり、マルチタスクのスキルが重要といえるでしょう。
4.積算
積算とは設計図から必要な材料や数量を算出し、工事費用の見積もりを出す職種です。
そのため設計図や仕様書を適切に読み取るスキルが求められ、施工の流れを総合的に考えることが重要になります。
また費用は相場をベースに計算する必要があるため、知識だけでなく豊富な経験も欠かせない職種といえるでしょう。
工務店・住宅業界の現状
では次に、工務店・住宅業界の現状をみていきましょう。
全体的にみれば住宅着工戸数や世帯数が減少していることもあり、市場規模は減少傾向にあります。
しかし首都圏ではマンション高騰が原因となり、戸建てへの需要が高まっているなどプラス面に期待がもてる点が特徴といえるでしょう。
1.住宅着工戸数の減少
新たに着工された住宅数を示す「新設住宅着工数」は、2013年〜2019年まではゆるやかに増加傾向だったものの、2020年には減少し約80万戸となっています。
上記の内容は国土交通省が毎年公表しており、住宅市場の動向を確認するうえで重要視されている指標です。
2021年には多少回復しましたが、従来に比べると全体的には減少傾向にあります。
コロナウイルスが主な原因とはなるものの、そもそも住宅業界の消費者数が減少しているといえるでしょう。
2.マンション価格の高騰による戸建ての注目
近年では首都圏を中心にマンション価格が高騰していることもあり、戸建て住宅への需要が高まっています。
そのため2010年以降、住宅業界全体の市場規模は少しずつ回復傾向にあり好調にすすんでいるといえるでしょう。
また異業種企業の参入や住宅メーカーとゼネコンの業務提携などが増加し、東南アジアに向けた販売市場が拡大している点も特徴です。
物流倉庫や賃貸物件の開発も進んでいるため、今後は海外での事業拡大がすすんでいくと考えられます。
3.大手メーカーは非住宅分野の事業強化
日本では少子高齢化の影響によって世帯数は減少し、消費者や市場規模は減少傾向にあります。
そのため大手メーカーでは高齢者向け住宅やオフィスビルなど、非住宅分野の事業を強化しており、需要の見込める内容へと転換している状況です。
なかには二酸化炭素を活用した「人工光合成ハウス」の実験などを行う企業もあったりと、新しい技術も積極的に導入されています。
今後もさらに新しい技術や非住宅分野での成長が考えられるため、中小の工務店でも変化していく姿勢が求められるでしょう。
リフォーム業界についてはこちらの記事をご覧ください。
コロナによる工務店・住宅業界の変化
近年社会に大きな影響を与えたコロナウイルスは、工務店・住宅業界にもさまざまな変化をもたらしました。
特に住宅に求める条件は大きく変化しており、今後はコロナを加味したうえでの住宅づくりが求められるでしょう。
ここでは、コロナによる工務店・住宅業界の変化について解説していきます。
1.住まい探しの加速化
コロナの影響を受け、住まいを変えようと考えている人はコロナ前より増加傾向にあります。
引用:Mirai style
上記の資料では、首都圏で全体の33%東海地方で全体の24%が住まい探しを検討。
2020年の5月と9月を比べても「促進された」と答えた割合が10%以上増え、住まい探しは加速化しています。
コロナによって仕事の働き方などライフスタイルが変化したことが原因となり、住まいを見直すきっかけとなった人が増加したと考えられるでしょう。
また近年ではWebで住まい探しをする人が増えています。よって工務店にホームページは必須といえます。
2.⼀⼾建てへの意向が向上
マンションの高騰に加え、コロナの感染対策を意識する人が多く、一戸建て住宅への需要は増加傾向にあります。
前述の理由でも触れましたが、通勤圏やライフスタイルの変化も大きな原因となり、首都圏以外の土地でも住宅購入を考える人は多くなりました。
また住宅であっても、玄関近くの洗面所などコロナを意識した住宅の設計も増えている点が、従来との大きな変化です。そのため今後は住宅の利便性だけでなく、コロナや地震への耐久性なども住宅に求められる重要な要素といえるでしょう。
3.新たな住宅に求める条件
コロナの影響を受け、住まい探しの加速化や一戸建て住宅への需要増加を解説してきましたが、住まいの条件も大きく変化しています。
具体的には以下の変化です。
- ワークスペース
- 快適な居住空間
- 自然や屋外とつながる住宅
1.ワークスペース
今までは通勤することがあたり前でしたが、コロナの影響によって在宅勤務が増えたこともあり、住宅に仕事専用のワークスペースを重視する人が増加しました。
書斎やセカンドリビングなど居住空間とは別のスペースが求められ、今まで以上に広い間取りが人気といえます。
またWi-Fiなどの通信環境も重視され、仕事面での利便性は今後欠かせないポイントになるでしょう。
2.快適な居住空間
電気料金の値上げや家にいる時間が増えたことから、省エネや日当たりなど、快適な居住空間を求める人も増加しています。
近年では高気密高断熱住宅やパッシブデザインを活用した住宅も多く、生活するうえで利便性の高い住宅は需要が高いといえるでしょう。
また今後は政府のエネルギー政策と住宅の組み合わせも増えると予想されるため、いままで以上に生活を便利にする住宅づくりが求められます。
3.自然や屋外とつながる住宅
コロナによる在宅勤務増加・外出自粛・休園や休校といった影響で、部屋以外の庭・バルコニーなど自然や屋外とつながる需要も増加しています。
在宅勤務によって住宅内で仕事のオンとオフを切り替えたり、子どもと遊べたり、外出しなくても遊べる・リフレッシュできる場所が求められるからです。
そのためウッドデッキのあるバルコニーや屋上庭園など、自然に触れられる空間は人気があり、今後の住宅づくりでは重要視されるポイントといえるでしょう。
4.オンライン集客へのシフト
工務店・住宅業界は集客面でもコロナの影響を受け、オフライン集客からインターネットを活用したオンライン集客へとシフトしています。
従来までは住宅展示場やモデルハウスなど、リアルの場で顧客とコミュニケーションを図ることが一般的でした。しかしコロナ禍によって人を集めたり、対面したりすることが難しくなっています。
また顧客の行動も大きく変化し、工務店のメインターゲットとなる20~40代の客層は新聞や雑誌よりもインターネットを活用することが大半です。
そのため現代社会の状況と顧客の行動が合致するオンライン集客が注目を集め、多くの工務店が急速にシフトしているといえるでしょう。
工務店・住宅業界の今後の課題
時代の移り変わりにより、工務店や住宅業界にも改革が求められています。
具体的には人材不足や職人不足、オフライン集客の限界などからDX化が必要となり、新規着工数の減少から新しいビジネスモデルへの取り組みが挙げられるでしょう。
ここでは3つの課題を提示し、Web制作会社が考える対応策をご紹介していきたいと思います。
1.人材・後継者不足
まず最大の課題は、業界全体における人材・後継者不足です。
住宅業界や建設業界では、少子化・職人の高齢化によって、人材不足が加速しています。
長時間の肉体労働も多く、若者が嫌悪する傾向が高いことが理由のひとつといえるでしょう。
また現場作業においても、木造住宅は機械化が難しく、木材を扱える一流の職人を育てるためには時間をかけなければいけません。なかには「育成期間の間に辞めてしまう従業員が多い」など、育成過程で悩まれている経営者も多いのではないでしょうか。
改善するためには
- 求人募集サイト・採用サイトを作る
- DX化
働き手となる若い世代は、インターネットを通じて職場を探す人が圧倒的に多く、採用サイトやSNSがあれば応募が増え、優秀な人材を獲得できます。「勤務の流れ」や「先輩インタビュー」など掲載することで求職者とのマッチング率が高まり離職も防止できるでしょう。
またITを導入し日々の業務面を効率化することで、人手不足な工務店でも生産性を上げられます。施工管理や勤怠管理といった事務的なものだけでなく「ドローンを活用し外壁や屋根の点検」「荷物の運搬」など通常では人手や手間がかかる工程の、作業時間の短縮になります。
2.住宅着工戸数の減少
人口減少は日本の世帯数の減少も招き、今後新しく住宅を建てる人は減っていくと考えられます。
そのため戸建て住宅をメインとする工務店・住宅業界の市場は縮小傾向となり、多くの中小工務店は淘汰されるといっても過言ではありません。
改善するためには
- リフォーム業界への参入
- 新しいビジネスモデル
新規住宅と反比例して増え続ける空き家を活用したリフォームやリノベーションの需要は、今後も増すと考えられます。地方移住を考えている若い世代向けに、Web集客も検討しましょう。
建機教習所の開講や先進技術を持つ企業への事業投資、農業分野への参入といった得意分野を上手に活用した事業展開も新しいビジネスモデルとしておすすめです。
3.オフライン集客の限界
工務店や建設業では、従来より「紹介」や「下請け」、「営業」によって仕事を獲得してきました。しかし企業からのプッシュ型の営業を嫌う若い世代の増加や、コロナ禍で対面営業ができなくなったことで業績が悪化した企業も多いでしょう。
したがって、オフライン集客は限界にきているといっても過言ではないでしょう。
今後はWebを活用した集客に切り替えることをおすすめします。
改善するためには
- ホームページからのお問い合わせを増やして元請け・直請け仕事を得る
- ブログやSNSなどWeb集客を活用する
これからは企業の一方的な情報発信ではなく、顧客がGoogleやYahoo!JAPANなどの検索サイトやSNSなどで検索し、自社を見つけてもらうインバウンドマーケティングが主流になります。ユーザーの役立つ情報を発信し、見込み顧客の育成・購買を経て、最終的に自社のファンに定着させるマーケティング手法がおすすめです。
工務店・住宅業界の将来性
つづいて工務店・住宅業界の将来性について、以下3つの観点から解説していきます。
- 2040年には新規住宅着工戸数が43%減少
- 住宅ストック市場の推進
- 「ZEH」化住宅の増加
1.2040年には新規住宅着工戸数が43%減少
少子高齢化や人口減少に伴い、2030年には既存住宅を購入する世帯は50%の減少、2040年には新規住宅着工戸数が43%減少すると言われています。
そのぶん空き家など中古物件を購入する顧客が増えると考えられ、新規住宅の市場は非常に厳しい状況といえるでしょう。
そのため今後はどの工務店においても、新築住宅だけでなくリフォーム等の事業も視野に入れることが重要です。
少ない市場を勝ち抜くことも大切ですが、需要のある市場で少しでもシェアを獲得することが、今後工務店が生き抜く戦略となります。
リフォーム業の集客について解説した記事もあります。
2.住宅ストック市場の推進
人口減少によって空き家が増加すると危惧されている日本では、政府が「住生活基本計画」として住宅ストック市場の推進を測っています。
住生活基本計画とは既存住宅の活用を目的に、リフォームやリノベーションの新規ビジネスを推し進める施策です。
政府としては既存住宅販売の市場を2025年までに現状の2倍に増やすとしており、新たに多くの企業が参入すると考えられるでしょう。
そのため既存ビジネスだけでなく、住宅ストック市場などの新しい事業への取り組みが欠かせません。
3.「ZEH」化住宅の増加
2020年に「改正省エネルギー基準」が義務化されたことにより、消費エネルギーがゼロの「ZEH」化住宅が増加すると考えられます。
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略となり、以下の3要素から住宅のエネルギー収支を0にする仕組みです。
- 断熱
- 省エネルギー
- 創エネルギー
具体的には断熱性の高い建築によって冷暖房の消費エネルギーを減らし、家庭用の燃料電池や太陽光発電によって電力を補っていきます。
大手メーカーを中心に「ZEH」化住宅が販売されはじめており、今後は環境性能を重視した住宅の価格競争が進んでいくでしょう。
まとめ
本記事では工務店・住宅業界の業態や業種から現状について、そしてコロナ禍の変化を解説してきました。
工務店・住宅業界は後継者不足や市場の縮小傾向など、将来的には問題となる要因が複数考えられます。
ただしコロナ禍では一戸建て住宅の需要が増加しているなど、プラスの面があることも事実です。
そのためリフォーム業態の対応やオンライン集客への移行など、はやめにマイナス要素を補う対策を実施し、将来的な市場を勝ち抜いていきましょう。