「お客様の声」は自社商品・サービスの改善や新商品の開発など、企業の成長に欠かせない要素の一つ。
しかしやみくもにアンケートを実施するだけでは、本当に重要な「お客さまの意見」を拾いきれません。近年はSNSなどのインターネットが発達しているため、どのようにお客さまの本音が集まるのかを考えることが重要です。
本記事では誰もが実践できる「お客様の声」の集め方を5つピックアップし、具体的な実践手順を3ステップにまとめました。
お客様の声を活用している企業事例について、また競合と差をつける「質の高いお客様の声」の集め方をお教えします。
お客様の声とは?集めるべき理由
「お客様の声」とは、企業の商品・サービスに向けられた意見・感想のことです。商品・サービスを使用した感想や問い合わせをはじめ、改善の要望やクレームなど、お客様の声にはさまざまな意見が寄せられます。
そのため「お客様の声=顧客の本音」となり、企業がお客様の声を集めることで以下のメリットを得られます。
- 消費者のニーズがわかる
- 自社サービスの改善に活かせる
- 最新の市場動向がわかる
例えば「新商品がなかなか売れない…」と悩んでいる場合、もしかしたら消費者にとってニーズからずれている商品の可能性もあります。この場合はニーズを拾い集め、商品の仕様を使いやすく改善することで、大ヒット商品となる可能性も。
しかし通常では、消費者の深い本音は簡単にはわかりません。
そこでお客様の声を集めることで、既存商品の改善から新商品の開発まで、さまざまな場面で活かせる点が最大の特徴といえるでしょう。
お客様の声の集め方5選
お客様の声は複数の方法から集められますが、本音に近い意見もあれば、その場限りの本音から遠い意見も存在します。そのため複数の方法を実施し、さまざまな角度から分析するようにしましょう。
ここでは代表的なお客様の集め方について、以下の5つから紹介していきます。
- SNS(ソーシャルリスニング)
- アンケートの実施
- 商品の割引・プレゼント
- モニターテストの実施
- 口コミの調査
1.SNS(ソーシャルリスニング)
ソーシャルリスニングとは、SNSで発信されている情報を集める手法のことです。
近年、インターネット・SNSが普及したことで、消費者自ら情報発信を行うことが一般的となりました。
例えば「新商品のレビュー」や「お店に来店した感想」など、SNS上では商品・サービスに対するさまざまな意見が投稿されています。
またSNSでは不特定多数の人に向けた発信が多く、「消費者の本音」が拾いやすいプラットフォームといえるでしょう。
そのためSNSをとおして情報収集することで、「企業に対するイメージ」や「消費者が抱える悩み」など、普段では聞くことができない本音の意見を集められます。
2.アンケートの実施
「購入の決め手」や「自社を知ったきっかけ」など、自社の知りたい内容を質問する際は、アンケートの実施がおすすめです。
初来店時・会員登録時・購入後など、お客さまの購買意欲に合わせたタイミングでアンケートを実施できるため、各フェーズの顧客心理を知れる点がメリット。
仮に「自社の認知を増やしたい」と考えている企業であれば、初来店時に「自社を知った経緯・きっかけ」を質問することで、どのようなルートで認知が増えているのかを知れます。
また会員登録などの基本情報と合わせて実施することで、お客さまも自然な流れで回答ができ、アンケートへの抵抗をできるだけ抑えられる点も特徴です。
3.商品の割引・プレゼント
お客さまのなかには「何も得られない」「自分のことを聞かれたくない」などの理由で、アンケートや質問を嫌がる方も一定数います。
このような場合におすすめの方法は、アンケートや質問の報酬として「商品の割引・プレゼント」を用意することです。
例えば「飲食店がレビューを集めたい」と考えた場合、来店したお客さまに「レビューをしてください」とお願いするだけでは、なかなか行動に移してくれません。
しかし「レビューを書いたらドリンク1杯無料」などの特典があれば、無償でお願いするよりも多くのお客様の声を集められるでしょう。
無理に大幅な値引きや高額なプレゼントを用意する必要はなく、お客さまに「少しでも得をした」と感じさせることが重要なため、まずは簡単なクーポンなどから試してみましょう。
4.モニターテストの実施
モニターテストとは企業が座談会・体験会を開催し、お客さまを一箇所に集めて本音を聞き出す方法のことです。
新商品のレビューと称して座談会を開催することで、お客さまが感じた生の意見を聞くことができます。
また近年では、新商品・改良品のサンプルをお客さまの自宅に送付し、日々の生活の中で使用してもらう「ホームユーステスト」も増加しています。
実際に商品・サービスを活用してもらうことで企業側からは見えなかった発見なども多く、テストマーケティングとして活用される機会が多い手法といえるでしょう。
業種や販売している商品単価によって実施の可否は異なりますが、新しい商品・サービスを販売する前段階におすすめの手法となります。
5.口コミの調査
SNS同様にお客さまの本音を分析しやすい手法が口コミの調査です。
代表的なものはAmazonや楽天などのECサイトとなり、商品を販売しているだけで多くの意見を集められます。
とくに近年ではどの業種においても複数の口コミサイトが存在するため、費用をかけずに簡単にお客さまの声を集められる点が特徴。
ただし口コミは誰もが気軽に投稿できるため、なかには一方的な批判や悪口を投稿するケースも多いです。
本音で投稿してくれている場合は参考にして改善に努めれば良いですが、ただ第三者を中傷する目的の場合もあるため、「何が正しくて活かすべきなのか」をしっかりと見極めることが重要になります。
お客様の声の集め方3ステップ【手順】
づづいてお客様の声の集め方について、以下の3ステップから解説していきます。
- 目的設定
- 収集方法の選定・実行
- 収集した情報の分析
1.目的設定
まずは「どのような目的のためにお客様の声を集めるのか」について考えましょう。
具体的には、以下の目的が挙げられます。
- 現状の商品・サービスを改善したい
- お客様から寄せられるクレームを解消したい
- 新しい商品・サービスを開発したい
- リリースしたての商品・サービスの反応を知りたい
仮に現状のサービスを改善したいのであれば、「自社サービスを長く使用している人」「最近使用し始めた人」が調査対象となるでしょう。
対して新しいサービスの開発であれば、自社サービスを使用したことがない人の意見も参考になります。
目的によって、お客様の声を集めるべき対象・手段は異なるため、まずはどのような顧客像を対象にするのかを明確化しましょう。
2.収集方法の選定・実行
目的を設定した後は、「お客様の声を集める手段」を考えていきます。
基本的にはターゲットとなる顧客像が多く集まる媒体・調査方法を選ぶことが重要です。
もしも既存顧客をターゲットにするのであれば、商品購入時にアンケートを実施する方法や、商品購入の数週間後にメールにて意見を聞くなどの方法が挙げられます。
対して新商品のリリースを考えている場合であれば、明確な顧客像が浮かばない可能性もあるでしょう。このような場合は、ターゲットとなるお客さまの属性・行動を考え、インターネット調査やSNS調査を行うことがおすすめです。
前述の「お客様の声の集め方5選」にて具体的な方法を紹介していますので、ぜひ参考にしながら考えてみましょう。
3.収集した情報の分析
お客様の声が集まりはじめたら、似たような意見がどの程度あるのか、カテゴリごとに意見をわけていきましょう。
なぜなら近い意見を分類することで、お客さまが「何に対して不満を感じているのか」「どのような面を良いと感じてくれているのか」が明確になるからです。
ただし同意見が少ない場合でも、自社に活かせる貴重な意見の可能性も十分にあります。したがって「少数意見だから気にしない」ではなく、集めた意見を社内で共有し、さまざまな角度から情報を分析することが大切です。
またお客様の声が実際の改善につながったのかを判断することも重要なため、集めた情報と具体的な改善策はセットで考えるようにしましょう。
お客様の声の活用事例
心理学的にも人間は第三者の意見を重視しやすい(ウィンザー効果)と言われており、企業の経営にも「お客様の声」は活用できます
ここではお客様の声を活用した事例について、以下2つの企業を紹介していきます。
- おそうじ本舗
- 無印良品
おそうじ本舗
出典:おそうじ本舗
ハウスクリーニング事業を行っているおそうじ本舗は、ホームページで「お客様の声」専用のページを用意し、顧客の購買意欲を上手に高めている事例です。
具体的には、以下の6項目に関するアンケートを記載しています。
- サービス依頼箇所
- サービス満足度(5段階評価・3項目)
- 依頼したきっかけ
- 次回利用したいサービス
- 次回もおそうじ本舗を利用したいか
- その他の意見
ホームページでは直筆のアンケート用紙も掲載され、利用した人が「本音で回答している」ことが伝わってくる設計に。そのため依頼を検討している方の背中を押すきっかけになり、第三者目線で自社サービスの価値を高められています。
またお客さまのなかには〇〇店長などと名指しで褒めているケースも多く、店員さんの丁寧な仕事ぶりが感じられる点も「お客様の声」を上手に活用しているポイントです。
無印良品
出典:無印良品
日用品や家具など幅広い生活用品を扱っている無印良品は、ホームページ内で商品に関するリクエストを集め、「お客様の声」から新商品の開発を行っている事例です。
年間で約5,000件の新商品リクエストが届くなか、約200件のアイデアを採用することで、消費者目線で「求めている商品」を数多く実現。
過去には累計200万個売り上げた「体にフィットするソファ」など、大ヒット商品も「お客様の声」からアイデアを得ています。
現在お客さまのリクエストを集める「くらしの良品研究所」は終了していますが、「お客さまとともに商品を作る」というテーマや戦略については、まさに「お客様の声」を最大限に活かしている事例といえるでしょう。
質の高いお客様の声の集め方
お客様の声について、集める手段や流れについて解説してきましたが、最も重要なことは「質の高い意見」を集めることです。
どんなに多くの意見を集めたとしても、「内容が具体的ではない」「購入して数年経った後の感想」「定型文ばかり」では、改善には活かせません。
そのため以下の3点を意識し、できるだけ新しい価値のある意見を集めましょう。
- 具体的な内容を質問する
- 利用直後のお客さまに依頼する
- 厳しい意見も取り入れる
1.具体的な内容を質問する
お客様の声を集める際は、できるだけ具体的な内容を質問し、お客さまが回答しやすい状態をつくりましょう。
なぜなら「サービスを利用した感想を教えて下さい」と質問するだけでは、「良かった」「悪かった」など抽象的な感想しか得られないからです。
しかし多くの意見を集められたとしても、抽象的な内容だけでは自社の改善に活かせません。そのため以下のような質問を用意し、できるだけ詳細な内容を引き出すようにしましょう。
- 商品・サービスを申し込んだ経緯やきっかけ
- 商品・サービスを利用して変化したこと
- もしも商品・サービスを利用していなかったら
- 商品・サービスの利用を迷っている人へ
また「商品・サービスの利用を迷っている人へ」のような意見があると、読んでいる人に影響を与える「お客様の声」になります。
2.利用直後のお客さまに依頼する
前述のとおり、質の高いお客様の声を集めるには「いかに具体的な内容であるか」が重要になります。そのためには、できるだけ利用直後のお客さまに意見を聞き、鮮度の高い内容を集めるようにしましょう。
例えば数年前に商品を購入したお客さまに「購入のきっかけ」を聞いたとしても、大半のお客さまは詳細な内容を覚えていません。また昔の顧客では、当時とは異なる市場状況の可能性もあるでしょう。
したがって契約・購入タイミングで依頼をする、もしくは後日Webやハガキなどでアンケートを実施するなど、購入から日付を空けすぎないように注意することが重要です。
3.厳しい意見も取り入れる
お客様の声を集めるうえで切っても切り離せないことは、自社に対する厳しい意見です。
さまざまなお客さまへ調査をしていると、なかには自社サービスに批判的な意見やクレームを受けることもあります。
しかし自社にとって都合の良い意見だけが正解とは限らず、なかには厳しい意見を取り入れることで、サービス改善に役立つ場面も多いといえるでしょう。
ただし明らかな批判や度を超えたクレームについては、考えすぎないことが重要です。そのため悪意のある意見なのか、本音で伝えてくれている意見なのかをしっかりと見極め、自社にとって価値のある場合のみ取り入れるようにしましょう。
まとめ
本記事では誰もが実践できる「お客様の声」の集め方を5つピックアップし、具体的な実践手順について解説してきました。
お客様の声からは、消費者ニーズや自社の改善点など、多くのことが学べます。なかでも新商品・サービスのリリース直後は、お客様の声次第で将来的な成長速度が変化するため、日々意見を収集し積極的に活かしていきましょう。