設計事務所の業界動向や将来性から市場で勝ち抜く戦略4つを考察

設計事務所の業界動向や将来性から市場で勝ち抜く戦略4つを考察
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従来は活躍する設計士も多く、設計事務所は需要が高く人気のある業界でした。

しかし近年のコロナウイルスやウッドショックの影響を受け、

「売上が減った、新しく仕事を取るのも難しい…」

「若者が少なく将来が不安」

などの悩みも多いと思います。特に「設計事務所で将来的にやっていけるのか」は、設計士なら一度は考えたことがある問題でしょう。自分自身そしてスタッフや家族のことを考えたときに、設計事務所の経営を維持していくことは大きな責任としてのしかかってくるのではないでしょうか。

そこで本記事では、設計事務所業界の現状や将来性を考え、今後売上を伸ばし続けるための戦略をまとめてみました。市場で勝ち抜く企業の特徴をお教えします。

目次

設計事務所の業界とは?  

設計事務所の業界とは?  

設計事務所は「建築設計業」に該当し、建物を建設する際の設計を行う仕事です。

仕事内容や分野によって、以下の4種類に分類されます。

  • 意匠設計事務所:建物の内観・外観や快適さを考えて設計
  • 構造設計事務所:建物の安全性や耐震性を考えて設計
  • 設備設計事務所:配線や配管などのインフラ整備を考えて設計
  • 組織設計事務所:意匠・構造・設備設計を総合的に扱う事務所

主な業務内容はこちら。

  • 調査・計画:土地調査から建設時の基本設計を行う
  • 建築設計:基本設計を図面に起こし、建物の設計を行う
  • 施工管理:施工の進捗から完成時の確認を行う

設計事務所では施工までの調査・設計業務がメインとなり、実際の施工はハウスメーカーや工務店に委託する流れが一般的です。ただし依頼主に代わって施工管理を行い、最終的な引き渡しまでを担当することもあります。

また設計士は資格が必要ありませんが、一級建築士や二級建築士などの国家資格を取得することで、業務領域が広がる建築士として活動できます。そのため規模の大きい仕事や業務の幅を広げたい場合には、建築士として仕事を獲得することが求められます。

設計事務所の業界動向・現状 

設計事務所の業界動向・現状 

つづいて設計事務所の業界動向と現状について、以下の4つから解説していきます。

  1. 新設住宅着工戸数の減少
  2. 人材不足・後継者不足
  3. コロナによるオンライン化の加速
  4. ウッドショックによる資材価格の高騰

1.新設住宅着工戸数の減少

少子高齢化や人口減少の影響があり、新設住宅着工戸数は年々減少傾向にあります。

設計事務所の業界動向・現状 

引用:株式会社野村総合研究所

実際に上記の資料を見ていただくと、2005年は129万戸あった着工数が2020年には81万戸。
2022年〜2023年にかけて若干の上昇はするものの、2040年には約50万戸になると予想されます。

また自宅を所有する高齢者が亡くなったり、高齢者住宅へ転居することで、空き家の増加も問題点の一つ。そのためリフォームや改装工事の需要が増し、中古住宅の市場が拡大するといえるでしょう。

目先で新設住宅工事がなくなるわけではありませんが、今後は競争の激化が考えられるため、リフォーム市場の参入や非住宅への転用市場が生き抜くポイントになります。

2.人材不足・後継者不足

建設業全体で雇用者数や離職率が高く、設計事務所では深刻な人材不足・後継者不足に陥っています。

考えられる人材不足の原因はこちら。

  • 3K(きつい・汚い・危険)のイメージ
  • 不安定な雇用条件・低賃金
  • 拘束時間の長さ・現場仕事

主軸として働いていたスタッフの高齢化・退職が増加しているものの、なかなか新しい人材を確保できないのが現状です。そのため考えられる原因を改善し、まずは働きたいと思われる企業になることが重要なポイントといえるでしょう。

また建設業では2024年4月1日から働き方改革が適用され、規約違反をすれば罰則を受けることになります。したがってこの機会に雇用条件や労働状況をしっかりと整えるようにしましょう。

3.コロナによるオンライン化の加速

近年のコロナウイルスの影響によってオンライン化がすすみ、いままで遅れていた建設業でもインターネットの活用が必須となっています。

例えば、いままで紙媒体で保管していた図面や管理表をWebのクラウド上に保存することで、複数人での共有や場所を問わない管理が可能になります。また比較的打ち合わせの多い建設業では、顧客や取引先とのやり取りもオンライン会議で済ませる流れに変化しています。

このように業界全体でオンライン化が加速しているものの、何も対策てきていない企業は多いといえるでしょう。しかし苦手という理由だけで拒んでいては仕事を獲得できない状況に陥るため、円滑にコミュニケーションを取れるよう早期の対策が重要です。

4.ウッドショックによる資材価格の高騰

コロナウイルス感染拡大やアメリカの住宅ブームの影響により、輸入木材の価格が高騰する「ウッドショック」が起こりました。

日本では国内林業が衰退したこともあり、使用している木材の約60%を輸入木材に頼っている状況。そのため輸入木材を軸としていた企業、低価格住宅を強みにしていた企業では大きな影響を受けると考えられます。

「国内の木材に変更すれば対応できる」と捉える方もいらっしゃいますが、使用する木材が変われば根本的な設計から見直さなければいけません。

また需要に追いつくだけの供給は不足しているため、現実的に厳しい対策方法といえるでしょう。
したがってビジネスモデルを新たに変化させるなど、企業としての転換が求められる可能性を考えておくことが重要です。

設計事務所業界の将来性  

設計事務所業界の将来性

ここでは設計事務所業界の将来性について、以下の3つから解説していきます。

  • 補修・改装工事の増加
  • AI技術による業務の変化
  • M&A・事業承継の増加

1.補修・改装工事の増加

将来的には空き家増加の影響を受け、補修・改装工事の需要が高まると考えられます。
そのため設計の仕事においても、リフォーム住宅の設計がメインとなる時代に変化するかもしれません。

またリフォーム住宅以外にも、中古住宅を活用したビジネスモデルは増加するといえるでしょう。

中古住宅を活用したビジネスモデル例

  • シェアハウス
  • コワーキングスペース・レンタルオフィス
  • 介護施設・高齢者施設
  • カフェ・飲食店経営
  • 宿泊施設・民泊

近年ではコロナウイルスの影響を受け、テレワークを導入する企業も増えました。
それに伴いコワーキングスペースやレンタルオフィスもニーズがある分野です。

このように中古住宅を軸にするだけで仕事の幅を広げられるため、補修・改修工事を前提とした設計を強化することで、将来的にも需要を勝ち取れます。

2.AI技術による業務の変化

将来的にAI技術が進歩すると、ビックデータからコンセプト設計や実施設計を代替することが可能です。そのため設計士として取り組む業務に変化が起こり、AIを活用したほうが効率性の向上につながると予想されます。

しかし設計では顧客にあった唯一無二のデザイン性が問われる部分も多く、すべての技術をAIが代替できるわけではありません。例えば量産型のデザインはAIに、オリジナル性のあるデザインは人間が担当するなど、個人のセンスやコンセプトが重要視されると考えられます。

そのため今後はオリジナル性を高め、競合の設計事務所とは異なる唯一無二のデザイン性が求められるといえるでしょう。

3.M&A・事業承継の増加

人材不足・後継者不足の影響により、将来的に設計事務所ではM&Aや事業承継に踏み切る企業が増加すると考えられます。

  • M&A:株式譲渡や事業譲渡によって企業を売却する方法
  • 事業承継:事業を後継者に引き継ぐこと(親族内事業継承・親族外事業継承)

またM&Aや事業承継の増加が考えられる理由はこちら。

  • 経営者が引退年齢に達したため
  • 倒産や廃業を避けるため
  • 経営者に子どもがいないため親族内で事業継承ができない
  • 後継者の育成ができず事業を引き継げない

企業として事業を続けるためには、経営が安定した状態を維持しなければいけません。
そのため該当する人材が少なければ、M&Aや事業承継は非常に有効な手段といえるでしょう。

設計事務所が業界で生き残る戦略4つ 

設計事務所が業界で生き残る戦略4つ 

将来的に業界で生き残る設計事務所になるには、自社集客力や提供するサービスの強化など、複数の面から対策することが重要です。理想はすべてを平等に取り組める状態ですが、まずは自社の売上や集客に直結する要素から改善することをおすすめします。

ここでは設計事務所が業界で生き残る戦略について、以下の4つから解説していきます。

  1. Webサイトの運用
  2. 若年層の雇用・育成
  3. 時代に合わせたデザインの提供
  4. 将来を見据えた先行投資

設計事務所の集客方法について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

1.Webサイトの運用

1つ目の戦略は、Webサイト運用による仕事獲得です。Webサイトは自社の情報発信を行う媒体として利用でき、認知拡大から顧客獲得までを一貫して実施できる点が特徴になります。

特に設計事務所ではWebサイトをしっかりと活用している企業が少なく、集客を意識した対策を行うことで十分な成果を見込めるでしょう。

集客を意識した対策例

  • ブログ集客
  • SEO対策(検索エンジン最適化)
  • ファーストビューから問い合わせまでの導線設計

なかでもブログ集客は「顧客に役立つ情報」を発信することで、自社を知らない層へも認知を広げられます。また過去の設計事例や設計コンセプトの掲載によって、共感を得ることで自社のファン化も可能。

住宅購入はリードタイム(契約までの時間)が長いため、顧客のファン化は将来的な成約獲得につながる重要な施策です。

2.若年層の雇用・育成

2つ目の戦略は、若年層をターゲットにした雇用と育成です。

安定した経営、そして人材不足による倒産を防ぐためには、長期的に活躍できる人材が不可欠となります。

仮に55歳以上のシニア世代を雇用した場合、目先では活躍できるものの、10年・15年後には引退する年齢となるでしょう。そのため早い段階から若年層を雇用し、将来的に企業の軸として活躍できるように育成することが大切です。

とはいっても人材不足の現状では、簡単に人材を確保できない企業がほとんど。
若年層を雇用するためには、以下の点を意識して働きやすい環境を作ることが重要です。

  • 企業の独自制度を設け、イメージアップを図る
  • 動画を活用した研修・教育など、若年層に合わせた体制を整える
  • 資格の取得・スキルアップの制度を強化する

給与や休日などの労働条件はもちろんのこと、教育体制についても見直していきましょう。

3.時代に合わせたデザインの提供

3つ目の戦略は、時代に合わせて提供する設計デザインやコンセプトを変化させることです。

コロナによって在宅ワーク向けの住宅が増えたように、時代の需要に合わせて顧客が求めるものは変化しています。そのため業界や社会の動きをしっかりと追いかけ、顧客ニーズを満たす設計デザインを意識しましょう。

将来的に考えられる住宅設計例

  • 自然素材を用いた「健康住宅」
  • 設備や機能性の高い「過ごしやすい住宅」
  • 仕事・学習部屋が充実した「在宅ワーク向け住宅」
  • AI技術・Iotが搭載された「IoT住宅」
  • 消費エネルギーを抑えられる「ZEH住宅」

上記のような設計に加えてオリジナル性を高めれば、競合にはない自社の魅力を最大限に高めることが可能です。

4.将来を見据えた先行投資

4つ目の戦略は、将来を見据えたうえで行う積極的な先行投資です。
前述で紹介してきたように、市場で生き残るにはWebサイトの運用やオンライン化など、さまざま面で費用をかける必要があります。

しかし成長率が低い企業ほど先行投資を避ける傾向があり、現状維持で満足しやすいといえるでしょう。仮に現状を永続的に維持できれば問題ありませんが、住宅市場などから考えると非常に厳しいと考えられます。

そのため現状を脱却し将来的に成長するためには、投資として時間や費用をかけることが重要です。

また近年は補助金や助成金が充実しているため、かけるべき要素には費用を惜しまずに取り組むことをおすすめします。

設計事務所が活用できる補助金・助成金例

  • IT導入補助金
  • 持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • トライアル雇用助成金
  • 人材確保等支援助成金

まとめ

本記事では設計事務所業界の現状や将来性を考え、今後売上を伸ばし続けるための戦略を解説してきました。

設計事務所ではさまざま問題があるものの、リフォーム業やクリエイティブな設計など、需要はなくならない業界といえるでしょう。

しかし新設住宅は市場が縮小するため、ビジネスモデルの転換や顧客ニーズに合わせた設計を行うことが必須となります。そのため本記事で紹介した戦略を参考に、早期に対策をはじめていきましょう。

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