「自社サイトの制作や運営を任せていたホームぺージ制作会社が突然倒産!」「しかも音信不通!」
……そのような事態が発生したら、どうなってしまうのでしょうか。
最悪の場合、イチから自社サイトを作り直すことになります。制作した自社サイトを時間とコストをかけて、もう一度作り直すという事態はなんとしても避けたいものですよね。
この記事では、万が一ホームページ制作会社が倒産してしまっても、自社サイトを守れるよう対処法をご紹介。どのような企業であっても倒産するリスクはゼロではありませんから、知っておいて損はないでしょう。
ホームページ制作会社が倒産するケースはめずらしくない
ホームページ制作会社に自社サイトの制作や運営をするときには、「その会社が倒産するかも」なんてことは思わないでしょう。
しかし、自社サイトの制作・運営を依頼していたホームページ制作会社が倒産し、急に音信不通になってしまったというケースは、度々見られます。特に近年は、Web業界は競争が激化しているため、経営が安定していたホームぺージ制作会社であっても、業績が悪化して廃業するリスクをはらんでいます。
また、自社サイトに関する予算が少ない場合は、格安でサービス提供しているフリーランスや個人事業の制作会社に依頼をしているかもしれません。しかし、フリーランスや個人事業の制作会社は資本金が少ないだけでなく、営業力が弱い場合もありもあり、中小企業や大手企業に比べて廃業に追い込まれる可能性は高いでしょう。
以下の図を見てもわかるように、倒産する企業の大半は小規模事業者が占めています。
知るほど怖い…ホームページ制作会社が倒産することのリスク
制作会社がなくなったところで、ホームページ自体はできあがっているから大丈夫!
と思われている方も多いのではないでしょうか?
自社サイトの制作や運営を依頼していたホームページ制作会社が倒産して連絡が取れないと、最悪の場合、新たに自社サイトを作り直すことになってしまいます。
なぜなら、サーバーやドメインなどの契約を制作会社に一任していた場合、倒産すると同時にサーバー会社やドメイン会社との契約も解除されているかもしれません。その場合、近いうちに自社サイトが表示されなくなってしまいます。
データ等を引き継いでいたとしても、元の自社サイトの解析がスムーズにできないと、復旧作業に時間を要するかもしれません。
- 自社サイトが閉鎖される
- 自社サイトのデータがすべて消える
- 自社のドメインを悪用される
- 新たに数十万~数百万円かけてホームページ制作することになる
自社サイトを復旧するには、新たな制作会社にアクセス情報やプログラムファイルなどを渡し、自社サイトの内容を解析したうえで、見積もりを出してもらいます。サイトによっては何度も更新を重ねたため、サイト内のソースコードに不要な情報が残っていたり、ページを増やしたため複雑な構造になっていることがあります。そういった場合は、解析に時間や手間がかかるでしょう。
ホームページ制作会社が倒産した場合の対処法3つ
自社サイトの制作や運営を依頼しているホームぺージ制作会社が倒産してしまうと「ちょっとやばいぞ…」とわかったところで、実際に倒産に遭った場合は、どのような行動を起こせばよいのでしょうか。ここでは、制作会社が廃業してしまったときにすべき行動をまとめました。状況によっては、比較的容易に復元できる場合があります。
まずすべきは、ドメインとサーバー所有者が自社・ホームぺージ制作会社どちらなのかを確認することです。
以下の2つの条件のうち両方、または「2」を満たしていれば、自社サイトを復元できる可能性が十分ありますが、「3」の場合はサイトをゼロから新しく作り直すことになるでしょう。
- 自社がドメインの所有権を保有している
- 自社がサーバー契約者。または、サーバーにログインできる
- ドメイン所有者がホームページ制作会社で、サーバーのID・パスワードがわからない
1.ドメイン所有者をチェック
ホームぺージ制作会社が廃業したら、まずドメインの所有者を確認しましょう。
ドメインとはWebサイトの住所のこと。例えば、当社キクシルのURLなら「https://kikushiru.jp/」のうち、「kikushiru.jp」の部分がドメインです。
ドメインの所有者を確認するには、以下のような「Whois」と呼ばれるサービスを利用すれば誰でも調査できます。
- TECH-UNLIMiTED
- ラッコドメイン
- ドメイン所有者が自社であれば、データを別のサーバーに保存し、ドメイン名とIPアドレスを変換できるDNSサーバーを再設定すれば、再び自社サイトを公開できます。
- サイトのデータはサーバー内に保管されていますので、サーバーにログインしてデータを入手する必要があります。
ドメイン所有者が倒産した制作会社だった場合は、ドメインが解約されてしまうとホームぺージが表示されなくなってしまいます。
また、ドメインが売りに出されてしまっていることもあります。その場合は、ドメインを買い戻すことになるでしょう。特に質の高いコンテンツを配信してきたサイトのドメインは、価値があります。ドメインは、サーチエンジンが検索結果を上位表示をする基準の一つで、新たにドメインを取得し、サーチエンジンに評価されるまでには、時間がかかるでしょう。よって、今まで自社サイトが上位表示されていたのであれば、買い戻すことをおすすめします。
ドメインを取り戻せなかったとしても、サーバーにログインができデータを入手できれば、新たにドメインを取得すれば自社サイトの復元が可能です。
2.サーバーの情報をチェック
サーバーとはWebサイトの「土地」で、サーバー上にはWebサイトのデータが保管されています。ここでチェックすべきは、「サーバーにアクセスできるかどうか」です。サーバーにログインさえできれば、自社がサーバー契約者でなかったとしても、データを取り出せ、自社サイトの復元が可能です。
もし、サーバーの契約者がホームページ制作会社であり、アクセスIDやパスワードもわからない場合は、制作会社からバックアップデータをもらっていないか確認してみましょう。バックアップデータもない場合は、残念ながら最初からデータを作り直さなければなりません。
3.制作・運営をしてくれるホームページ制作会社を探す
次に、自社サイトの制作や運営を引き継いでくれるホームぺージ制作会社を探します。
制作会社に依頼する場合は、以下の情報をまとめておくとスムーズです。
- ドメインの所有者
- サーバーの契約者とログイン情報
- CMSツールのログイン情報
- 倒産したホームページ制作会社の状況、契約内容
制作会社は現状を確認したうえで、作業に関する見積もりを算出します。できるだけ詳しい情報を収集しましょう。
「ドメインのこともサーバーの情報もまったくわからない!」という場合でも、制作会社に相談してみてください。手元にある情報から調査をし、対処法を提案してくれる制作会社もあります。
ホームページ制作会社の倒産に備える対策5つ
ホームページ制作会社はいつ倒産するかわかりません。個人事業の場合は、急な体調不良やご家族の状況によって廃業に追い込まれるケースもあります。万が一、ホームぺージ制作会社が倒産してしまっても、困らないよう対策を対策を講じることが大切です。
1.ドメインやサーバーを自社で契約・運営する
自社サイトを公開するドメインは自社で契約しましょう。できればサーバーの契約も自社で行った方がベストです。
サーバーの運営には専門的な知識が必要なため、サーバーの契約や運営はホームページ制作会社に任せることは少なくありません。制作会社のサーバーを利用することもあるでしょう。その場合は、制作会社が廃業したときや、音信不通となったときには自社サイトの更新作業などができなくなってしまいます。よって、以下の情報を必ず控えておくことが重要です。
- コントロールパネルへのログイン情報(ユーザーID・パスワードなど)
- サーバーへの接続情報(FTPやSSHなどの接続情報)
2.FTPアカウント情報を確認しておく
FTPアカウントとは、データやデータベースを保存しているサーバーにアクセスして
サーバーのデータを取り出す、サーバーにデータを書き込むといったことが可能となる権限です。
FTPアカウントの情報があれば、ホームページ制作会社が廃業してしまい、サーバーにログインできない状況であっても、自社サイトのデータを引き出せる可能性があります。
FTPアカウントの情報は通常、次の3つです。
- ホスト名
- ユーザーID
- パスワード
3.CMS情報を控えておく
Webサイトの制作や更新、運営を行うためのCMSのログインIDとパスワードも控えておきましょう。
CMSの多くは、アクセス解析機能が備わっています。アクセスの多いユーザーや流入キーワードなどを把握できるだけでなく、過去の更新履歴も把握できます。ホームページ制作会社と音信不通になっても、CMSにログインできれば、復旧や引き継ぎがスムーズにできる可能性があります。
WordPressなど、ユーザーの権限によって操作が制限されるものもありますので、自社の権限も確認しておきましょう。例えば、自社の権限によっては記事の閲覧や作成、編集はできるけれど、記事の公開やユーザー運営はできないということがあります。
制作会社は、クライアントが勝手にWebサイトをいじってしまわないよう、ログイン情報を共有しなかったり、権限を制限したりする場合があります。しかし、制作会社の音信不通や倒産など万が一に備えて、すべての操作が可能となる権限を付与してもらうよう相談してみましょう。
4.ホームページのデータを保管しておく
自社サイトを制作や更新してもらったときには、データファイルも納品してもらいましょう。ファイルを納品する場合は別途、費用がかかるケースもありますが、いざというときに備えて、データを手元に保管しておけば安心です。
1.画像・デザイン素材
制作会社が廃業して、自社サイトの制作や運用ができなくなった場合、使用している画像やデザイン素材などのデータが手元にないと、新たに作り直さなければなりません。手間やコストもかかりますので、AIデータやPINGデータなどの画像・デザイン素材は、追加料金が発生しても納品してもらいましょう。
制作会社から納品されたデザインなどの著作権を確認しておくとトラブルを防げます。
納品してもらったデザインなどを自社サイト以外のサイトや、パンフレットなどに使用すると著作権を侵害する恐れがあるためです。
2.プログラムファイル一式
ホームページ制作会社のサーバーを使って自社サイトを公開している場合、制作会社が倒産してしまったときに、データを取り出せなくなってしまう可能性があります。よって、プログラムファイルを入手しておきましょう。
プログラムファイルとは、HTMLファイルやCSSファイルのこと。「ユーザーがこのボタンをクリックすると、問い合わせフォームを表示する」など、Webサイト上でユーザーが何らかの操作をしたときに、Webサイトではどのようなアクションをするか、指示をするものです。
自社サイトの最新版のデータを入手できるよう、サーバーと自分のPC間でファイルの転送ができるFTPソフトなどを利用して、定期的にデータを取り込む環境を作っておくのもおすすめです。
3.ホームページ仕様書
自社サイトの概要や機能を記した仕様書もあると、ホームページ制作会社が廃業してしまったときに、他社への引き継ぎがスムーズです。
仕様書には、主に以下のような情報が記されています。
- Webサイトの目的
- KPIなど目標数値
- サイト構造(サイトマップ)
- デザインや機能
制作会社によって、
- 仕様定義書
- 要件定義書
- 要求定義書
と呼ばれることもあります。
5.ホームページ制作会社と良好な関係を構築しておく
ホームぺージ制作会社との関係を築いておくことも有効です。制作会社の担当者と信頼関係ができていれば、制作会社が倒産してしまっても、音信不通にならずに、担当者が情報やデータの提供に協力してくれる可能性があります。
人の善意によるものであるため、絶対に協力してくれるとは言い切れません。とはいえ、関係性ができていれば、意思疎通が図れ制作がスムーズになるため、良好な関係を構築しておいて損はないでしょう。
ホームページ制作会社との契約が「リース契約」の場合は注意が必要です。Webサイトは、車などのようにモノとしての形がないため、「無形」であり、無形のものに関してはリース契約ができません。
しかし、中には、パソコンやソフトなどをリース契約をし、オプションとしてホームページを作るという営業を行う制作会社も存在します。
リース契約は、さまざまなデメリットがあるうえ、契約期間は3〜5年の長期間に及び、中途解約には違約金が課せられるため、締結しないのが良策です。
リース契約のデメリットは、主に以下のようなものが挙げられます。
- リース契約が満了したらWebサイトの所有権がなくなる
- リース契約期間中はリニューアルができない可能性がある
- 自社サイトの公開後は、修正や運用に対応付加であるケースがある
「パソコンをリース契約すればホームページを低コストで作れる」ことをうたっている制作会社は、予算がない企業にとっては魅力的に見えるかもしれません。しかし、弊害も少なくないことを念頭に置いておきましょう。
リスクの少ないホームページ制作会社の見分け方
どのような企業であっても、絶対に倒産しないとは言い切れません。とはいえ、自社サイトの制作・運営には、倒産リスクの少ないホームページ制作会社を選ぶことは大切です。では、どうやって倒産リスクの少ない企業を見分ければ良いのでしょうか。
それは、倒産の理由の大半を占める「業績不振」になりにくい制作会社を選ぶことです。業績不振に陥る可能性が少ない制作会社を見極めるには、以下をチェックすると良いでしょう。
1.企業規模
当然ながら、企業規模が大きい方が業績不振に陥りにくく、倒産リスクは低いでしょう。資本金が潤沢にあるだけでなく、多くのクライアントを保有しているため、会社を存続するのに十分な売上があります。
2.制作実績
小規模事業者であっても制作実績が豊富なら、売上が立ち、業績不振となる可能性は少ないと言えます。
制作会社のWebサイトには、制作実績を紹介しているページがありますから、必ずチェックしてみましょう。制作実績を公表していなかったり、実績が少なかったりする場合は注意が必要です。
3.クライアントへの対応
クライアントへの対応も倒産リスクを測る基準になります。なぜなら、対応が悪いとクライアントが離れてしまい、その結果、業績が悪化するかもしれないからです。大手の制作会社であっても、クライアントから悪評を立てられれば、業績不振に陥る可能性は十分にあり得ます。
以下のような対応をしてもらえる場合は、優良な制作会社だといえます。自社サイトの制作・運営も円滑にできるでしょう。
- データの共有、ドメインやサーバーの契約者を自社にしてもらえる(または、サーバーのログイン情報を共有してもらえる)
- レスポンスが早い
- 納期やクオリティを守る
- 助言だけでなく、デメリットを説明してくれる
4.やばいと思ったら契約しない!
何事にも直感は大事です。制作会社の担当者と打ち合わせをしているときに「よくわからない」「ちょっとおかしい」と疑問に感じたら、立ち止まってみましょう。複数の制作会社を比較するのが効果的です。
また口コミサイトなどで悪評が多く書かれている会社も注意が必要です。何度も社名が変わっている、という場合は過去に不正をはたらいた可能性もあります。
ただし1つのサイトにだけひどい悪評が書かれている、「○○会社 やばい」とあいまいな情報だけ書かれている場合は、その会社のことをよく知らないブロガーが自サイトのアクセスを増加させるために書く「炎上商法」である可能性が高いです。
口コミを調べる際は、次のようにすると良いでしょう。
- 信頼できるサイトを見てみる
- 複数の口コミを参考にする
まとめ
ホームページ制作・運営は個人でもできるため、近年は格安で制作・運営を行っている小規模事業者が増えています。自社にWebサイトに関する予算が十分にないときは、そういったホームページ制作会社に依頼するという企業も少なくないでしょう。
ただし、小規模な事業者は資本金が少ない、営業力が弱いといったウィークポイントがあるため、倒産するリスクをはらんでいます。廃業したとたんに音信不通となるケースもめずらしくありません。また、大手企業だからといって、倒産しないとも言い切れないでしょう。
それゆえ、ホームページ制作会社が倒産しても、自社サイトを復旧できるよう、先手を打っておくことは重要です。この記事で紹介した対策を講じておけば、たとえ制作会社が廃業して連絡が取れなくなっても安心です。新たな制作会社に制作・運用を依頼するときもスムーズでしょう。