アプリやWebシステムの開発にはさまざまな手法があり、なかでもソースコードを書かずに開発ができる「ノーコード」が近年注目を集めています。
しかし「ノーコードって、どんなメリットがあるの?」「どんな風に使えるのかわからない」などと、ノーコードアプリの開発に関して悩んでいる方は、多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ノーコードの概要や、導入される背景、メリット、注意すべき点などについて詳しく紹介します。またおすすめのノーコードツールについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
専門知識がなくてもアプリ開発ができるノーコード
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ノーコード(NoCode)は、プログラミングをまったく行わずにアプリやWebシステムを開発することです。
通常、アプリやWebシステムの開発には、専門的なプログラミングの知識が必要です。しかしノーコードを活用すれば、専門知識がなくても業務用システムや、ECサイト、モバイルアプリなどの開発ができます。
ローコードとの違い
ローコードとは、少ないソースコードを用いてシステム構築をする手法を指します。
ローコードで開発する場合は最低限のソースコードを入力するため、ある程度の専門知識が必要です。専門知識が必要な反面、ノーコードと比べるとカスタマイズがしやすい特徴があり、ほかのソフトウェアとも連携しやすいです。
ノーコード開発が向いている企業
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ノーコード開発は、ドラッグ&ドロップでアプリ開発が可能です。そのため、IT人材が少ない中小企業や個人事業主でも導入しやすい特徴があります。
- ネットショップ開設・運営したい小規模事業者
- アプリを活用したDXに取り組みたい中小企業
- 企画~運用までの開発期間を短縮させたいベンチャー企業
GoogleやMicrosoftなどがノーコードツールの開発・強化をしており、日本の大手企業でもノーコード導入が進んできています。
ノーコードの活用が広まっている理由
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ノーコードを活用したアプリ開発は、年々増え続けています。ここでは、ノーコードの活用が広がってきた背景について紹介します。
IT人材の不足
IT人材は全国的に不足しており、年々深刻化しているのが実情です。
経済産業省によると、IT人材の需要は2018年には107万人、2020年には111万人と予想されており、2030年には132万人に達すると見込まれています。
一方、日本のIT技術者は、2021年時点でおよそ91万人となっており、このまま推移すると2030年には59万人ほどの不足が予想されています。
豊富なクラウドサービス
ノーコード開発には、さまざまなツールが発表されており、自身の用途に合ったプラットフォームを気軽に選べます。
またノーコード・ローコードプラットフォームの買収が世界中で盛んに行われており、GoogleやMicrosoftなどの大企業も積極的にノーコードの開発・統合を進めています。
スピーディーな開発の必要性
グローバル化が進むなか、企業では多様・複雑な課題が増加しています。そのため、問題に対してスピーディーに対応できるノーコード開発の重要性が高まっているのです。
ノーコードのメリット3つ
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ノーコードの主なメリットは、以下の3点です。
- プログラミングの知識がいらない
- 開発コストの削減ができる
- 開発スピードが速い
以下で具体的に紹介します。
1.プログラミングの知識がいらない
ノーコードは、プログラミング言語やITスキルがなくてもアプリ開発ができることが一番の特徴です。
高レベルのエンジニアが自社に不在な場合でも、一定レベル以上のアプリ・Webシステムを開発できます。また、IT人材の採用や、既存のスタッフへの教育コストを抑えられるため、開発にかかる人件費を削減できます。
2.開発コストの削減ができる
ノーコードは、アプリやWebシステムなどの開発コストを大幅に削減できます。
従来アプリ・システムを0ベースから開発する場合は、数百万円〜数千万円単位の費用が必要です。そのため、小規模事業者や中小企業にとっては、コストが高く導入しにくい課題がありました。
しかし、ノーコードを活用すればプログラミングに精通したエンジニアでなくても開発ができるため、開発コストを大幅に抑えられます。
3.開発スピードが速い
スピード感のある開発ができるのも、大きなメリットです。
ノーコード開発は、フルスクラッチ(既存のテンプレートを使わず0から開発)と比べて開発の工数を大幅に削減できます。そのため、早期にリリースでき、ユーザーからのフィードバックが得やすい特徴があります。
またノーコードはシンプルな開発をするため、エラーやバグが生じにくい特徴があります。
ノーコード開発で注意すべきポイント
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メリットが多いノーコードですが、活用する際には注意すべき点もあります。以下では、ノーコードの特性について理解を深めましょう。
UI/UXデザインが変更しにくい
基本的には、シンプルな操作性でスピーディーな開発・運営ができるようにUI/UX(User Interface/User EXperiece)は、テンプレート化されています。
しかし、テンプレート化されているためUI/UXの設定には限界があり、より自由に設定したい方には不向きかもしれません。
大規模・複雑な機能開発には向いていない
ノーコードで開発できるツールは、できる範囲や仕様が決まっています。
そのため、大量のデータを取り扱ったり、複雑な技術要件に対応したりするには、不向きなケースがあります。
ノーコード開発の始め方
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ここでは、ノーコードの開発する際におすすめの勉強方法を紹介します。
ノーコードツールを触ってみる
ノーコード開発ツールの多くは、直感的な操作ができるようになっています。
最初から苦手意識を持たず、まずは難易度の低いアプリから作成してみましょう。
学習コンテンツを視聴する
ノーコードに関する学習コンテンツは、ネット上に多くあります。
開発元が公開している学習コンテンツや、第三者が公開している動画などがあり、自身の課題にあわせた勉強がしやすいでしょう。
ノーコード開発者向けのコミュニティを利用する
「外部からヒントを得たい」「細かな仕様をつくりたい」という場合は、開発者向けのコミュニティを利用するのもおすすめです。
システム開発におすすめのノーコードツール
以下で、システム開発におすすめのノーコードツールを紹介します。ツールごとに、どのような特徴があるのか理解し、導入の参考にしてください。
Glide
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「Glide(グライド)」は、Google Sheetsなどのスプレッドシートをデータベースとして使用し、そのデータをもとにモバイルアプリを自動で生成できるノーコードツールです。
既存のスプレッドシートで管理していたデータを活用でき、地図や画像、チャットボットなど、さまざまな要素を組み込むことができます。
bubble
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「bubble(バブル)」は、アメリカ発祥の知名度の高いノーコードアプリです。直感的・視覚的にも使用しやすく、スピーディーなアプリ開発が可能です。
カスタマイズ性が高く、ユーザー認証や、データベース操作、外部APIの統合、ファイルのアップロード、ワークフローの自動化など、さまざまな機能が組み込まれており幅広いアプリ開発に活用できます。
業務効率化におすすめのノーコードツール
以下で、業務効率化におすすめのノーコードツールを紹介します。各ツールごとにどのような特徴があるのか理解し、導入の参考にしてください。
kintone
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「kintone(キントーン)」は、サイボウズ株式会社が提供するビジネスアプリプラットフォームです。
直感的なドラッグ&ドロップによって独自のアプリが開発でき、ビジネスのニーズにあわせたロジックの設定を自由に構築できます。承認フローやリマインダーなどのワークフロー管理機能が組み込まれており、業務プロセスの効率化や透明化が図れます。
AppSheet
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「AppSheet(アップシート)」とは、プログラミング知識がなくても業務改善のアプリを作成できるGoogleCloudサービスです。
Googleが運営しているため、Googleのほかのサービスとの連携が簡単であり、スプレッドシートやGmailと連携し情報をまとめて管理できるようになります。
Zapier
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「Zapier(ザピアー)」は、ワークフローに特化したアプリ開発ができるノーコードツールです。異なるアプリ間でのタスクやデータの自動化ができ、5,000以上ものアプリと統合ができます。
Gmail・Slack・Trello・Google Sheets・Salesforce・Shopifyなどと連動したアプリを開発できます。
Airtable
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「Airtable(エアテーブル)」は、スプレッドシートとデータベースを組み合わせた柔軟性の高いクラウドベースのデータ管理ツールです。
データベース作成に必要なエンコードの入力が不要で、Google スプレッドシートと同じように使用でき、データの可視化やタスク管理などが可能となります。またほかのアプリとも連動性があり、Slack・Googleカレンダー・Gmail・Trelloなどのツールとの連携が可能です。
PowerApps
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「PowerApps(パワーアップス)」は、Microsoft社が提供する業務アプリケーションプラットフォームです。データの収集・解析などもでき、フィードバックしながら業務効率化に役立つアプリを開発できます。
WordやExcel、SharePoint、Microsoft Azureなど、Microsoft製品との連携が容易であり、既存のシステムやデータと統合ができます。
Webサイト開発におすすめのノーコードツール
以下で、Webサイト開発におすすめのノーコードツールを紹介します。ツールごとにどのような特徴があるのか理解し、導入の参考にしてください。
Webflow
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「Webflow(ウェブフロー)」は、CMS(コンテンツ管理システム)に対応したWebサイトができるノーコードツールです。
直感的なビジュアルエディタができ、コーディングの知識がなくてもドラッグ&ドロップやクリックでウェブサイトのデザインができます。
CSSやJavaScriptを書かずに、アニメーションも簡単に追加でき、動きのあるウェブサイトが構築可能です。
また、eコマース機能も提供されており、商品カタログの管理や、ショッピングカート、決済処理などもできます。
Shopify
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「Shopify(ショッピファイ)」は、カナダで誕生したeコマースプラットフォームです。ECサイト作成のプラットフォームとして知名度が高く、世界175ヵ国で活用されており、特に、中小規模のビジネスや新興企業に人気があります。その数は増加の一途を辿っています。
直感的なインターフェースと豊富なテンプレートを提供しており、初心者でも簡単にオンラインストアを設定できます。また、テーマやレイアウト、カラースキームなどのカスタマイズも可能です。
Voiceflow
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「Voiceflow(ヴォイスフロー)」は、Amazon AlexaやGoogle Assistantなどの主要なサービスに対応した音声アプリを開発できるノーコードツールです。
ノーコード・ローコードで開発ができ、対話フローを設計し、アプリ構築ができます。ユーザーの対話データを収集し、分析する機能を提供しており、パフォーマンスの把握や改善ができるのが特徴の一つです。
スマホアプリ開発におすすめのノーコードツール
以下では、スマホアプリ開発におすすめのノーコードツールを紹介します。ツールごとにどのような特徴があるのか理解し、導入の参考にしてください。
Yappli
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「Yappli(ヤップリ)」は、日本発のノーコードアプリ開発プラットフォームです。
さまざまなテンプレートが用意されており、ドラッグ&ドロップや設定画面を使って、簡単にアプリを構築できます。Yappliで開発したアプリは、iOSとAndroidの両方に対応が可能です。一つの開発作業で両方のプラットフォームに展開でき、効率的な開発ができます。
Buildbox
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「Buildbox(ビルドボックス)」は、アメリカ発祥のノーコードゲーム開発ツールです。2D・3Dのモバイルゲームが作成でき、テンプレートをベースに開発ができます。
ツールには独自のルールシステムが組み込まれており、プレイヤーの動作や、アセットの挙動、勝利条件などを設定できます。直感的操作・開発ができ、ゲーム開発の初心者にもおすすめのツールです。
スピーディーなアプリ開発がしたいならノーコードがおすすめ
ノーコードは簡単にアプリ開発ができ、専門知識がなくても、さまざま課題に対応ができます。
しかし、限られた制約のなかでしか開発ができないなどの注意点もあります。ノーコードツールを活用する際には、開発したいサービスやアプリの要件を確認し、アプリ開発が可能か判断しましょう。